Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘍(診断 その他) 

(S570)

造影超音波での肝腫瘤後方エコー増強例の検討

Marked posterior echo enhancement of liver mass on contrast-enhanced ultrasonography

長沼 裕子1, 石田 秀明2, 長井 裕3, 渡部 多佳子2, 大山 葉子4, 櫻庭 里美5, 小丹 まゆみ6, 池田 芳則7, 柳 光江7

Hiroko NAGANUMA1, Hideaki ISHIDA2, Hiroshi NAGAI3, Takako WATANABE2, Yoko OHYAMA4, Satomi SAKURABA5, Mayumi KOTAN6, Yoshinori IKEDA7, Mitsue YANAGI7

1市立横手病院消化器科, 2秋田赤十字病院消化器科, 3NGI研究所, 4秋田厚生医療センター臨床検査科, 5能代山本医師会病院臨床検査科, 6市立横手病院臨床検査科, 7OST株式会社

1Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 3New Generation Imaging Laboratory, 4Department of Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center, 5Department of Medical Laboratory, Noshiro Yamamoto Ishikai Hospital, 6Department of Medical Laboratory, Yokote Municipal Hospital, 7OST Company Ltd.

キーワード :

【はじめに】
肝腫瘤を造影超音波(CEUS)で観察した際に,造影剤が腫瘤に流入直後より後方エコー増強が顕著になる症例を経験した.CEUS下での後方エコー増強現象はB-modeにおける機序とは異なるものと推察される.この興味深い現象について症例を検討し,考察を加えたので報告する.使用装置:東芝Aplio XG,日立アロカPreirus, Ascendus, GE LOGIQ E9.造影剤:第一三共Sonazoid®.
【対象と方法】
1)CEUSで腫瘤に造影剤が流入し腫瘤全体が強く染影され始めた直後より腫瘤の後方エコー増強が顕著になった7例(限局性結節性過形成(FNH)3例,血管腫3例,門脈瘤1例)に対し,腫瘤の大きさと位置,そのB-mode像と造影所見を検討した.2)機序の推察のため,新たに血管瘤(直径約3cm)ファントムを開発し,内部に造影剤溶液を潅流させ,CEUSで実験を実施した.
【結果】
1)肝腫瘤径10-26mm(平均16mm),位置はS3,2例,S5,2例,S6,3例,S8,1例で一定の傾向はなく,B-mode像は全例やや不均一な低エコー輝度を示し,わずかに後方エコー増強を認めた.造影所見ではFNHはspoke-wheel appearance,血管腫はfill-in appearanceを示し,全例血管相で腫瘤のほぼ全体が均一に染影された.門脈瘤は血管相で短時間に均一に染影された.後方エコーは,腫瘤が染まり始めてから4-9秒後(平均6秒)から増強が顕著になった.後方エコー増強は早期血管相のあいだ続き,それ以降周囲肝実質のエコーレベルが上昇するとともに目立たなくなった.2)血管瘤ファントム内に造影剤溶液を満たし,シリンジポンプで加圧と減圧を繰り返すことで乱流を作り,多方向に流動させるとそれまでなかった後方エコー増強がみられるようになった.
【まとめと考察】
B-modeにおいて,後方エコーの増強は,①周囲に比して減衰が少ない,②音速の差と組織の形状により音が集束する,ということで発生するとされる.しかし,今回われわれが経験したCEUSにおける後方エコーの著明な増強は,超音波の減衰の差や集束などでは説明できず,機序を考える上で興味深い現象と考えた.症例の検討では,比較的小さな腫瘤が短時間で均一に染影されるという条件がそろった場合に腫瘤の後方エコー増強が顕著になることより,腫瘤内の造影剤の状態に起因する現象と考えた.血管瘤ファントムモデルの実験では,内部に造影剤を均一に満たすと同時に多方向の動きが加わると後方エコー増強が再現され,これが造影剤によるものであることが確認された.これは,腫瘤内部に造影剤が均一に満たされている場合,この内部を超音波が多反射してプローブに戻っていくという反射経路において,そこに存在する造影剤で増強された信号成分が実際の後方エコー信号に加算されることで,あたかも後方エコー増強が顕著になったようにみえるのではないかと考える.今後さらに症例を重ね,実験で再現することにより,機序を検討していきたい.