Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘍(診断 その他) 

(S569)

多包性肝エキノコックス症の超音波所見の解析

Investigation of ultrasound findings of alveolar echinococcosis of the liver

鈴木 康秋, 井尻 学見, 芹川 真哉, 杉山 祥晃

Yasuaki SUZUKI, Masami IJIRI, Shinya SERIKAWA, Yoshiaki SUGIYAMA

名寄市立総合病院消化器内科

Gastroenterology, Nayoro City Genaral Hospital

キーワード :

【はじめに】
多包性肝エキノコックス症(AEL)は,典型例は石灰化を伴う嚢胞性腫瘤として超音波で描出される.しかし,微小嚢胞の集簇としての充実性病変,液化変性による嚢胞性病変,宿主反応による炎症性肉芽腫や石灰化がさまざまの程度に認められるため,それらを反映して多彩な超音波所見を呈する例も多い.今回我々は,AELの超音波所見を解析し,また,増大する経過と肝内小転移巣を超音波で確認した手術症例を経験したので報告する.
【対象】
AEL 15例26結節.男性10,女性5例.平均年齢:68.6(25-82)歳.平均病変径:49.5(14-120)mm.
【結果】
石灰化を反映するgranular strong echoは85%に認めた.hyperechoic areaは42%(平均径27.4mm),irregular echogenic areaは23%(58.1mm),anechoic or hypoechoic area with solid componentは35%(73mm)に認めた.造影超音波の後血管相では,辺縁がいびつで虫喰い様の造影欠損像(worm-eaten defect appearance;WED)を90%に認めた.
【症例】
70歳代,男性.2009年12月のCTでは肝腫瘤を認めなかった.2011年6月に他院で肝S4に径20mmのhyperechoic massを指摘されたが肝血管腫と診断された.2013年2月に当科でS4に径66mmのhyperechoic(一部irregular echogenic)massを認め,造影超音波ではWED所見を呈し,AELと診断.また,肝S7に10mmのhypoechoicな転移病巣を認めた.肝切除標本ではクチクラ層に囲まれた微小嚢胞が集簇し,周囲炎症細胞浸潤を伴っていた.
【まとめ】
初期のAELは,微小嚢胞はsmall hypoechoic area,集簇するとhyperechoic areaとして描出され,周囲の炎症性肉芽腫や内部の壊死・炎症・線維化が混在するとirregular echogenic areaを呈し,中心液化変性を伴うとlarge anechoic or hypoechoic areaとして描出されると考えられる.また,微小嚢胞・クチクラ層・内部壊死巣はいずれも造影超音波では欠損像を呈するため,B modeと造影超音波の組み合わせによる解析が,AELの診断に有用である.