Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘍(診断 悪性) 

(S568)

大腸癌肝転移診断における造影超音波の有用性:Gd-EOB-DTPA造影MRIとの比較

Sonazoid®-enhanced ultrasonography for diagnosis of colorectal hepatic metastases: comparison with EOB-MRI

渡邉 学1, 塩澤 一恵1, 松清 靖1, 高亀 道生1, 池原 孝1, 工藤 岳秀2, 丸山 憲一2, 金子 弘真3, 五十嵐 良典1, 住野 泰清1

Manabu WATANABE1, Kazue SHIOZAWA1, Yasushi MATSUKIYO1, Michio KOGAME1, Takashi IKEHARA1, Takahide KUDO2, Kenichi MARUYAMA2, Hironori KANEKO3, Yoshinori IGARASHI1, Yasukiyo SUMINO1

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 3東邦大学医療センター大森病院消化器外科

1Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, Toho University Medical Center, Omori Hospital, 2Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center, Omori Hospital, 3Division of Gastroenterological Surgery, Toho University Medical Center, Omori Hospital

キーワード :

【目的】
ソナゾイド®がクッパー細胞に取り込まれることを利用した造影超音波(CEUS)後血管相におけるdefectの評価は肝細胞癌(HCC)や転移性肝癌などの肝悪性腫瘍の存在診断に有用とされている.一方,Gd-EOB-DTPA造影MRI(EOB-MRI)は,dynamic studyと合わせ肝細胞相における評価も可能で,Bモード超音波(US)やdynamic CTでは認識できないような小さな悪性腫瘍を検出することができる.今回,われわれは大腸癌肝転移症例に対してCEUSとEOB-MRIの肝転移検出能における有用性をプロスペクティブに検討した.
【方法】
2011年1月〜2014年10月までに当院で診断された大腸癌症例のうち,BモードUSまたはdynamic CTで肝内に腫瘤性病変を指摘され,CEUSおよびEOB-MRIが施行された69例を対象とした.CEUSについては後血管相でdefectを確認し,描出されたdefectに対して全例re-injection methodを施行した.対象症例は肝腫瘤が5ヶ以上存在する症例は除外し,CEUSとEOB-MRIをほぼ同時期(1ヶ月以内)に施行した症例である.男性46,女性23例,平均年齢は66±12歳,原発巣は直腸27,S状結腸22,横行結腸10,上行結腸8,盲腸2例.転移性肝癌の診断は病理組織学的診断または画像検査による経過観察を元に行なった.実際の転移巣に対して,CEUSおよびEOB-MRIそれぞれの検査における存在診断(腫瘍数)および質的診断をプロスペクティブに比較検討した.質的診断については,腫瘍を5段階(5:明らかに転移である,4:おそらく転移である,3:どちらともいえない,2:おそらく転移ではない,1:明らかに転移ではない,もしくは転移は存在しない)で評価した.ROC解析によるROC曲線下面積(AUC),感度,特異度,陽性適中率(PPV),陰性的中率(NPV),正診率を算出し,両群間を比較した.CEUSの判定は超音波専門医,EOB-MRIの判定は放射線科専門医が独立に読影を行なった.なお本検討は病院倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
実際の肝転移数は133結節で,1症例当たり平均結節数は1.9個,全133結節の平均腫瘍径は20.5±17.6mmであった.存在部位はS1:2,S2:7,S3:11,S4:23,S5:14,S6:25,S7:20,S8:31結節.転移巣の検出数(検出率)はBモードUSが107(80.5%),CEUSが120(90.2%),EOB-MRIが131(98.5%)であった.AUCは,CEUS 0.91,EOB-MRI 0.85,p=0.40で有意差は認めなかった.CEUSとEOB-MRIにおける感度,特異度,PPV,NPV,正診率はそれぞれ,CEUS:90.8%,84.5%,97.1%,67.7%,90.2%,EOB-MRI:95.4%,70.8%,93.7%,77.3%,91%であった.
結果のまとめ:本検討において,感度についてCEUSはEOB-MRIに劣るが,特異度はEOB-MRIより良好であった.
【考察】
本検討において,EOB-MRIはCEUSに比べ腫瘍の検出能すなわち存在診断において感度が非常に高く,これはCEUSが患者因子や検者因子に影響されやすいためではないかと考えられた.一方,CEUSはEOB-MRIに比べ特異度およびPPVが高かった.CEUSはリアルタイムに腫瘍内の血流評価が可能であり,BモードUSで描出されない腫瘍であっても後血管相においてdefectとして描出された場合,そのdefectに対してre-injection methodにより再度血流を評価し,診断することができるためと考えられた.
【結語】
本検討において,EOB-MRIは転移巣の拾い上げに非常に有用な検査であることがわかった.しかし,腫瘍の質的診断にはCEUSが有用であり,両者を合わせて評価することにより大腸癌における肝転移の検出能は上昇するのではないかと考えられた.