麻生 和信, 岡田 充巧, 玉木 陽穂, 須藤 隆次, 太田 雄, 大竹 晋, 羽田 勝計

Kazunobu ASO, Mituyoshi OKADA, Yosui TAMAKI, Ryuji SUDO, Yu OTA, Shin OTAKE, Masakazu HANEDA

旭川医科大学内科学講座病態代謝内科学分野

Division of Metabolism and Biosystemic Science, Department of Medicine, Asahikawa Medical University

キーワード :

【はじめに】
造影3D超音波（造影3D）は画像処理技術の進歩に支えられ，近年大きく発展した分野である．なかでも肝腫瘍に対する臨床応用は，従来の診断レベルにとどまらず精密病態診断としての役割も検討されている．これまで我々は造影3Dを用いて肝癌に対する検討を中心に進めてきたが，今回は検討対象を肝腫瘍全般に広げ，造影2D超音波（造影2D）との比較からみた造影3Dの有用性について検討したので報告する．
【対象】
2014年9月30日までにB-modeで同定され，造影2Dと造影3Dを同時期（±1ヶ月以内）に両方施行した肝腫瘍連続70症例85結節を対象とした．平均腫瘍径は29.8mm（8〜89mm），体表からの深さの平均は7.2cm（1.9〜13.3cm）であった．
【方法】
使用装置は東芝社製Aplio 500．1．造影3D撮像法：3D専用Mechanical probeを使用し，Sonazoid^® 0.2ml/bodyをボーラス投与後，Differential Contrast Harmonic Imaging（D-CHI）5.0MHzのHigh MIモード（MI値0.73-0.80）にて撮像した．volume dataの取得は血管相，後血管相ともにauto scanによって行った．2．造影2D撮像法：convex probeを使用し，Sonazoid^® 0.015mL/kgを投与後，D-CHI 5.0MHzのLow MIモード（MI値0.20-0.25）にて撮像した．3．3D画像再構成：US tomography; UST，multi planar reconstruction; MPR，maximum intensity projection; MIPを作成した．4．画像評価：造影3Dの血流パターン評価はOhtoらの報告1）に準じて行った．本研究では肝腫瘍の質的診断率および肝癌の形態診断率について造影2Dとの比較検討を行った．
【結果および考察】
1．肝腫瘍の質的診断:造影3Dによる質的診断率はHCC/ICC/Meta/Hemangioma/FNHそれぞれ96.5/98.8/100/100/100（％）であり，極めて正確に診断することが可能であった．これは造影3Dの特長の一つである腫瘍血管の連続性向上によって，全体像がより正確に評価されたためと考えられた．一方，造影2DではHCC，Hemangioma，FNHでは95％以上の診断精度を残したが，従来の報告通りICCとMetaの鑑別に限界があると考えられた．2．肝癌の腫瘍形態診断：造影2Dの79％（57/72），造影3Dの85％（61/72）に後血管イメージで欠損像を認めた．さらにこの欠損像の境界部分について検討した結果，造影2Dでは95％が境界不鮮明を示したのに対し，造影3Dでは50％（36/61）と半数以上が境界鮮明であり，造影2Dよりも有意にコントラストが良好な結果が得られた（P=0.00002）．加えて造影3DのUSTは直交3断面を最小0.1mm間隔で連続的に評価出来ることから，腫瘍の輪郭評価ならびに進展度評価に大変有用と考えられた．
【結語】
造影3Dは肝腫瘍の立体構造を正確かつ客観的に評価することが可能であり，肝癌をはじめとした悪性腫瘍の精密病態診断において極めて有用と考えられる．
【参考文献】
1）Ohto M et al: Vascular Flow Patterns of Hepatic Tumors in Contrast-Enhanced 3-Dimensional Fusion Ultrasonography Using Plane Shift and Opacity Control Modes.: J Ultrasound Med 24:49-57，2005.