橋本 健二^{1, 2}, 田中 弘教^{1, 2}, 中野 智景^{1, 2}, 山平 正浩¹, 吉田 昌弘¹, 柴田 陽子¹, 東浦 晶子¹, 橋本 眞里子¹, 西口 修平², 飯島 尋子^{1, 2}

Kenji HASHIMOTO^{1, 2}, Hironori TANAKA^{1, 2}, Chikage NAKANO^{1, 2}, Masahiro YAMAHIRA¹, Masahiro YOSHIDA¹, Yoko SHIBATA¹, Akiko HIGASHIURA¹, Mariko HASHIMOTO¹, Shuhei NISHIGUCHI², Hiroko IIJIMA^{1, 2}

¹兵庫医科大学超音波センター, ²兵庫医科大学肝胆膵内科

¹Ultrasound Center, Hyogo College of Medicine, ²Department of Hepatobiliary and Pancreatic Oncology, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【目的】
肝膿瘍は治療時期を逸すると敗血症や多臓器不全をきたし致命的となることがあるため，早期から正確な診断や治療時期の判定が望まれる．低侵襲でベッドサイドでも診断可能な造影超音波検査（CEUS）には期待がもたれるが肝膿瘍のCEUS所見を検討した報告は少ない．肝膿瘍の各時相別のCEUS所見を検討するとともに診断や治療支援における有用性をCTとの対比も含め検討した．
【対象と方法】
対象は2009年1月から2014年2月に画像診断と臨床症状で肝膿瘍と診断され，CEUSが行われた11例（13結節）である．内訳は平均年齢66.1±15.4歳，男性7例，女性4例．使用した超音波装置は東芝社製のAPLIO XG，500である．プローブは3.75MHzコンベックス型．ソナゾイド^®投与量は0.5ml（0.0075μl/kg），MI値0.1-0.3．血管相の染影を検討した後，約15分でKupffer相の観察を行った．また膿瘍腔評価の有用性を検査モダリティ別（Bmode，CEUS，単純CT，造影CT）に行った．
【成績】
肝膿瘍の原因は細菌性5例，真菌性1例，不明5例．単発が6例，多発が5例．症状は，全例に発熱を認めた．CEUS施行までの日数は，症状発現後12.6±8.1日であった．Bモードでの腫瘤（B-SOL）径は平均46.8±20.7cmで，11結節（2結節はCEUSで発見）全例で境界不明瞭，形状不整であった．エコー輝度は4/11例で内部が低エコー，7/11例で内部不均一，B-SOL周囲の高エコーは全例で認めた．9/11例で腫瘤内部に無エコー領域を認めた．カラードプラでは8/10例で既存血管の流入を認めた．CEUS動脈優位相を①3cm以上のAvascular領域を含むLarge avascular pattern，②3cm未満のAvascular領域と辺縁の染影を含むHoney comb pattern，③3cm未満のリング状の染影のRing enhancement patternと定義した．①と②混合パターンは6/13例，②は5/13例，③2/13例であった．全例が動脈優位相で腫瘤境界部の外側領域にhypervascularな部位を認め，腫瘤と周囲肝実質との境界は不明瞭だった．SOL内の染影された部分は，Kupffer相で染影低下を認めた．Micro Flow Imagingを施行した7/8例で腫瘤内の実質部に周囲と同様の血管構造を確認した．また膿瘍腔の評価を各モダリティで比較した．CEUSは全例膿瘍腔を明瞭に確認できた．
【考案】
肝膿瘍は時期により画像所見が変化し，腫瘍性病変との鑑別が困難な症例や治療時期の決定に難渋する症例もある．B-modeで境界エコーが不明瞭，腫瘤内部が不均一，無エコー域を含み，腫瘤周囲の高エコー領域を認めた場合は肝膿瘍を鑑別にする．CEUS動脈優位相でHoney comb patternを含み，腫瘤と周囲との境界不明瞭な染影，非腫瘤部から腫瘤内に連続する血管構造が腫瘍性病変との鑑別に有用と考えた．造影CTでSOL内の無エコー域が不明瞭な場合でもCEUS動脈優位相ではavascular領域が明瞭となり，膿瘍ドレナージの治療時期の決定に有用と考えた．
【結語】
CEUSは肝膿瘍の診断，治療時期の決定に有用である．