Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘍(診断 良性) 

(S564)

肝細胞腺腫の超音波所見の検討

Evaluation of ultrasonography findings for hepatocellular adenoma

杉山 博子1, 西川 徹1, 加藤 美穂1, 刑部 恵介2, 市野 直浩2, 川部 直人2, 橋本 千樹2, 吉岡 健太郎2

Hiroko SUGIYAMA1, Toru NISHIKAWA1, Miho KATO1, Keisuke OSAKABE2, Naohiro ICHINO2, Naoto KAWABE2, Senju HASHIMOTO2, Kentarou YOSHIOKA2

1藤田保健衛生大学病院臨床検査部, 2藤田保健衛生大学肝胆膵内科

1Medical Technologist, Fujita Health University Hospital, 2Liver, Biliary Tract and Pancreas Diseases, Fujita Health University

キーワード :

【はじめに】
肝細胞腺腫は正常肝を背景に発生する肝細胞性の良性腫瘍である.欧米では女性に多く経口避妊薬服用との関連が報告されているが,本邦では少ない.診断は主にUS・CT・MRI等の画像所見によりなされているが,多血性腫瘍である肝細胞癌やFNHとの鑑別がしばしば問題となる.今回,当院で経験した肝細胞腺腫の超音波Bモード画像,ドプラ画像,造影超音波画像の画像所見を検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は手術による摘出標本での病理組織診断にて肝細胞腺腫と診断された3結節.性別は全例男性,平均年齢は43.3±15.8であった.
Bモード画像では腫瘍径,輝度(hyper・hypo・mix),境界(明瞭・不明瞭),輪郭(整・不整),ドプラ画像では血流の有無,血管の走行・血流性状を検討した.造影超音波では動脈優位相,平衡相,後血管相での腫瘤内染影の程度について検討を行った.
【結果】
各々の超音波所見はTableに示す.腫瘍径は平均59.3±17.9mm,輝度は全例mix,境界は全例明瞭,輪郭は整2例(67%),不整1例(33%)であった.ドプラは全例で血流を認め,2例で辺縁から流入する拍動性の血流を確認した.造影超音波では動脈優位相において一瞬で均一に染影されたものが2例(67%),不均一であったものが1例(33%),平衡相は全例均一となり,後血管相では全例で染影の低下を認めた.
【考察】
肝細胞腺腫は多血性肝腫瘍である肝細胞癌との鑑別がしばしば問題となる.今回,肝細胞腺腫の超音波所見をまとめることで,肝細胞癌との鑑別に有用となる所見が得られるか検討した.Bモード画像ではいずれも境界は明瞭であったが,輝度・輪郭ともに鑑別に有用となる所見は確認できなかった.ドプラ画像においても辺縁から中心部に血流を認めることから,肝細胞癌と類似した所見であった.しかし造影超音波では動脈優位相から平衡相で腫瘍は均一に染影されており,肝細胞癌との鑑別に有用な所見であると考えられた.
肝細胞腺腫は2010年のWHO分類に掲載されて以来,4つの亜型に分類されている.
また,肝細胞腺腫から肝細胞癌への悪性転化の報告例もあり,Pilatiらは悪性転化のリスクファクターとして,男性,アンドロゲン投与,β-catenin活性型肝細胞腺腫,β-catenin活性型+炎症性肝細胞腺腫などを挙げている.今後,症例を蓄積することで肝細胞腺腫と肝細胞癌との鑑別だけでなく,肝細胞腺腫の亜型ごとの画像所見の解析も必要と考える.