Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
下部消化管③ 

(S558)

術前経膣超音波検査が有用であった下部直腸癌術後局所再発切除の1例

Usefulness of preoperative transvaginal ultrasonography for surgery of local recurrence from lower rectal cancer -a case report-

永田 仁1, 2, 高木 和俊1, 石塚 満1, 岩崎 喜実1, 窪田 敬一1, 竹川 英宏2, 高田 悦雄2

Hitoshi NAGATA1, 2, Kazutoshi TAKAGI1, Mitsuru ISHIDUKA1, Yoshimoi IWASAKI1, Keiichi KUBOTA1, Hidehiro TAKEKAWA2, Etsuo TAKADA2

1獨協医科大学第二外科, 2獨協医科大学超音波センター

1Enerological Surgery, Dokkyo Medical University, 2Ultrasonic Center, Dokkyo Medical University

キーワード :

直腸癌術後再発は遠隔転移の他,局所再発の頻度も高く,下部直腸癌に対する腹会陰式直腸切断術後の局所再発は術後の瘢痕の影響もあり,CTではなかなか評価できないことも多い.今回,術前に施行した経膣超音波検査が手術のナビゲーションに有用であった1例を経験したので報告する.
症例は64歳,女性.1年前に下部直腸癌にて腹会陰式直腸切断術を施行されていた.病理結果はtub2,porでpA,pN2であった.術前のECOG performance statusが3であったため,側方郭清は施行していない.術後,経口剤による術後補助化学療法を6ヶ月行い,外来にて経過観察中であった.術後,10ヶ月目のPET/CTにて会陰創皮下脂肪織内に限局性のFDG取り込みがあり,体表超音波検査では同部に2.6×2.6cm大の境界明瞭な円形の低エコー腫瘤を認め,体表から腫瘤までの距離は約2cmあった.MRI検査ではT1強調像で筋と等信号で,T2強調像で不均一に淡い高信号を,拡散強調像では高信号を呈する,辺縁優位に不整な造影増強効果が認められる径2.7cm大,腫瘤を認めた.膣内腔への明らかな増殖はないものお膣後壁と広汎に接していた.直腸癌術後,局所再発の診断にて,初回手術後11ヶ月に全身麻酔下に再発巣切除を行った.Jackknife位とし,経膣超音波検査を施行.膣後壁に接する2.5×2.6cm大,表面やや不整で境界は明瞭な低エコー腫瘤を認めた.血流シグナルは腫瘤頭側の膣後壁近傍からと尾側の深部に認めた.皮切は前回会陰部の術創に行い,切除断端陰性とするため膣後壁を一部合併切除して腫瘍を摘出した.摘出腫瘍は3.0×2.4cm大であり,膣後壁への浸潤は肉眼的には不詳であった.病理結果はtub2であり,膣後壁とは接するものの直接浸潤は認めなかった.
本症例は腹会陰式直腸切断術後の骨盤死腔への播種が原因の再発と考えられ,通常の術後フォローアップで推奨される造影CTでも検出困難な病変であり,会陰部の体表超音波検査でも評価困難な病変であったが,経膣超音波検査では病変の描出が明瞭で膣後壁への浸潤評価も正確であった.また,腫瘍の栄養血管の流入方向も正確に捉えられ,術前のナビゲーションとして非常に有用であった.