Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
下部消化管② 

(S556)

当院で経験した花火大会における集団食中毒の超音波所見

Ultrasound findings of mass food poisoning in fireworks display that was experienced in our hospital

林 健太郎1, 北川 敬康1, 溝口 賢哉1, 秋山 敏一1, 五十嵐 達也2, 池田 暁子2, 戸塚 美愛子3

Kentaro HAYASHI1, Yoshimichi KITAGAWA1, Kenya MIZOGUCHI1, Toshikazu AKIYAMA1, Tatsuya IGARASHI2, Akiko IKEDA2, Miako TOTSUKA3

1藤枝市立総合病院放射線科, 2藤枝市立総合病院放射線診断科, 3藤枝市立総合病院感染管理室

1Department of Radiology, Fujieda Municipal General Hospital, 2Department of Diagnostic Radiology, Fujieda Municipal General Hospital, 3Infection Control Room, Fujieda Municipal General Hospital

キーワード :

【目的】
2014年7月に静岡市で開催された花火大会において,露天商が販売した冷やしキュウリが原因で,510名もの腸管出血性大腸菌O-157による集団食中毒が発生した.当院は開催場所から約20km離れた市中病院だが,疑い症例を含む13名が受診し,そのうち8名に超音波検査を施行した.その時の超音波所見を中心に文献的考察を加えて報告する.
【対象】
年齢は5〜26歳,平均17.4±5.5歳で,全て女性であった.
【方法】
方法は,腸管壁肥厚の程度と範囲,腸間膜リンパ節腫大,腹水について検討した.使用装置は,TOSHIBA製Aplio 400,Aplio 80,Xarioで,コンベックスプローブ及びリニアプローブを使用し,全例前処置は行わず検査を施行した.
【結果】
花火大会から検査までの経過日数は5〜9日,平均6.9±1.4日であった.全例に結腸に壁肥厚を認め,その存在範囲は上行結腸のみが3例,上行結腸から横行結腸までが2例,上行結腸からS状結腸までが3例であった.その内,上行結腸から横行結腸まで肥厚していた症例と,上行結腸からS状結腸まで肥厚していた症例を合わせた5例中3例では,最も強い壁肥厚部位は上行結腸であった.結腸の最大壁厚は8.8〜16.5mm,平均13.1±2.7mmであった.腸間膜リンパ節腫大は中等度が1例,軽度が4例で,3例には認めなかった.腹水貯留は2例に少量認め,6例には認めなかった.また虫垂の腫大(>7mm)が3例に認め,その大きさは7〜12mm,平均8.7±2.4mmであった.便培養は8例中7例に実施し,O-157が検出されたのは,3例(42.9%)であった.
【結論】
O-157の潜伏期間は4〜8日程度と言われているが,今回の検討でも平均6.9±1.4日と同等であった.超音波検査で,8例中6例(75.0%)で上行結腸に最も強い壁肥厚を認めたのは,従来の報告と合致していた.O-157腸炎は他の細菌性腸炎よりも,壁肥厚が強い傾向にあることが報告されているが,今回も同様であった.3例に虫垂の腫大を認めたが,虫垂の所見よりも上行結腸の所見が強い点で,虫垂炎とは言い難く上行結腸の炎症波及と考えられた.便培養で3例(42.9%)しか検出されなかったのは,O-157が少量の菌数で発症することや,当院受診前に抗生剤の投与が行われていたことなどが考えられた.このことからも超音波検査で右半結腸に強い壁肥厚を捉えることは,O-157腸炎の診断の一助になると思われた.また,今回のように同様の所見が連続した場合には,集団食中毒の発生も考慮すべきと思われた.