Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
下部消化管② 

(S554)

市中病院における腹部超音波検査による進行大腸癌の描出能についての検討

A study of the capability of visualizing advanced colorectal cancer by abdominal ultrasonography in community hospital

福島 豊, 中野 勝行

Yutaka FUKUSHIMA, Katsuyuki NAKANO

東神戸病院放射線科

Department of Radiology, Higashikobe Hospital

キーワード :

【はじめに】
消化管における腹部超音波検査(以下US)は,その簡便さや低浸襲性と実質臓器から管腔臓器まで評価できることから,当施設においても消化管のスクリーニングや悪性腫瘍の転移検索も含めた術前検査としての地位を確立しつつある.しかし,術前などで癌の存在が既知の場合でも,観察が困難な症例も多く経験する.そこで,今回USの進行大腸癌における描出能について検討したので報告する.
【対象】
対象は2009年7月から2014年9月までに,当院にて進行大腸癌と診断され手術が行われたうち,手術前の1か月以内にUSによるスクリーニングや術前検査が行われていた109例を対象とした.対象症例の内訳は,男女比60:49,平均年齢74.3歳,腫瘍径中央値4.0cmであった.
【使用装置・方法】
使用装置はAplio XG 790A.3.5MHzと6.0Mhzのコンベックス型および8MHzのリニア型探触子を適宜使用した.
全症例ともに無処置で,大腸を系統的走査にて観察を行い,層構造の消失した限局的な壁肥厚(5mm以上),内腔の狭小化や不整,硬化像,周囲の脂肪織輝度上昇などから総合的に判断した.
【評価項目】
全体の描出能および腫瘍の存在部位(盲腸を含む上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸)・腫瘍径・肉眼的分類・深達度・冠周率についてそれぞれの描出能について検討した.
【結果】
全体の描出能は52%であった.存在部位については,盲腸を含む上行結腸が14/22例(64%),横行結腸が14/22例(64%),下行結腸が6/10例(60%),S状結腸が13/24例(54%),直腸では10/31例(32%)の描出能であった.
腫瘍径は,2cm未満が1/5例(20%),2cm以上4cm未満が17/45例(38%),4cm以上が39/59例(66%)であった.肉眼分類は,1型が4/7例(57%),2型が52/100例(52%),3型が1/2例(50%)の描出能であった.深達度は,MPが6/19例(32%),SSが12/24例(50%),SEが33/58例(57%),SIが6/8例(75%)であった.冠周率は,半周未満が6/19例(32%),半周以上が51/90例(57%)であった.
存在部位では,直腸での描出能が低かった.腫瘍径が大きくなり,冠周率および深達度が増すほどに描出能の向上が認められた.肉眼分類に明らかな差は認めなかった.
【考察】
当施設でも系統的走査による消化管のスクリーニングを行っているが,進行大腸癌における全体の描出能は52%であり,諸家の報告よりも低い値となった.今回の検討は,スクリーニング検査と腫瘍の存在が既知である状態で行った術前検査も含まれているため,スクリーニングでの発見率は今回の結果よりもさらに下がると考えられる.
今回の結果を踏まえて,個々の技術の統一や系統的走査の再確認などを行い,さらなる精度向上のために精進していきたいと考える.
【まとめ】
今回,当施設におけるUSによる進行大腸癌の描出能について検討を行った.