Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
下部消化管① 

(S553)

小腸ポリープ重積として発症した多発性骨髄腫の一例

A case of multiple myeloma presented with small bowel intussception secondary to plasmacytoma polyps

古西 崇寛1, 斎田 司1, 関 正則2, 大津 和也2, 村田 聡一郎3, 大和田 洋平3, 坂田 晃子4, 星合 壮大1, 南 学1

Takahiro KONISHI1, Tsukasa SAIDA1, Masanori SEKI2, Kazuya OTSU2, Souichirou MURATA3, Youhei OWADA3, Akiko SAKATA4, Sodai HOSHIAI1, Manabu MINAMI1

1筑波大学附属病院放射線診断・IVR科, 2筑波大学附属病院血液内科, 3筑波大学附属病院消化器外科, 4筑波大学附属病院病理診断科

1Department of Diagnostic and Interventional Radiology, University of Tsukuba Hospital, 2Department of Haematology, University of Tsukuba Hospital, 3Department of Surgery, University of Tsukuba Hospital, 4Department of Pathology, University of Tsukuba Hospital

キーワード :

症例はBence-Jones protein-λ型の多発性骨髄腫に対して化学療法・自己末梢血幹細胞移植10か月目の52歳女性である.完全寛解との診断で外来通院を継続していたが,3か月前の非造影CTで,多発小腸ポリープとそれによる短距離の重積が認められていた.1か月前から間欠的腹痛の訴えがあり,増悪傾向であったが,上部・下部消化管内視鏡では原因は明らかではなかった.今回,摂食不良で予定外受診し,病歴および単純X線写真から腸閉塞と診断され入院となった.
入院時にはHb 8.5 g/dlと軽度貧血があったが,感染・炎症所見は認められなかった.遊離軽鎖(FLC)はλ鎖0.11 mg/Lと上昇しており,κ/λ比は0.113と有意に低下していた.尿中BJPでもλ型が検出され,入院前からの経過で次第に明瞭に検出されるようになってきていた.
腹部超音波検査では,小腸に類球形の隆起性病変(Isp型ポリープ)が多発していた.最大病変は45mmで微細分葉状を示していた.内部は均一な低エコー,あるいは内部に嚢胞状の一段と低い輝度を含んでいた.病変は小腸壁の筋層を引き込んでいたが,引き込みによる変形が強いため深達度の評価は十分に行うことができなかった.複数のポリープにおいてColor Dopplerでstalk部から放射状に広がる血流信号が認められ,Pulse Dopplerでは動脈波形も認められた.重積の先進部となっているポリープも認められたが,血流障害を疑う所見は認めなかった.小腸の蠕動は通常通り観察され,腹腔内にそのほかの特記すべき所見は認められなかった.
造影CTでも小腸に多数のポリープがあり,いずれの病変も動脈優位相から強く染まり,増強効果が持続していた.3か月前のCTと比較し,最大の病変で38mm→45mmなど,比較的急速な増大が認められた.
自然整復せず,高度の血流障害の所見はないものの腸間膜浮腫などの血流障害の所見が認められたため,外科的な重積解除を行う方針となった.術中には腸管外からの触診で多数の腫瘤が同定された.腸閉塞の原因となっている腫瘤を含め,3か所の小腸部分切除が施行された.肉眼的には乳白色〜赤色調,肉様の腫瘤であり,病理学的には主に粘膜下層から表層へ大きく隆起し,一部は固有筋層を超えて漿膜下層まで浸潤し,最大の病変では漿膜下層で肛門側方向への広汎な進展が認められた.いずれの病変でも形質細胞類似の腫瘍細胞が密に増殖しており,過去に多発性骨髄腫と診断された骨髄生検検体とほぼ同様の組織像であった.
同時期の骨髄生検では再発疑いに留まる診断だったが,5か月後(HDD,RDなど化学療法後)の骨髄生検で骨髄腫の再発と診断された.
小腸の多発ポリープ性病変として現れ,腸管外病変が明らかでない多発性骨髄腫/形質細胞腫の報告はまれだが,Amonkar G. et al. Histopathology 2003;42:404-412に,今回と類似の腸管多発ポリープおよび多発肝結節として現れた多発性骨髄腫/形質細胞腫が報告されている.これを含め,多少の文献の検討とあわせて報告する.