Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
下部消化管① 

(S552)

ソナゾイド®造影超音波検査が虚血の診断に有用であった鼠径ヘルニアの1例

A case report of usefulness of Sonazoid® to diagnose of intestinal ischemia of injuinal hernia

村川 佳子1, 小川 力2, 荒澤 壮一2, 出田 雅子2, 柴峠 光成2, 西田 知紗1, 河合 直之1, 丸山 哲夫1, 木太 秀行1, 工藤 正俊3

Yoshiko MURAKAWA1, Chikara OGAWA2, Souichi ARASAWA2, Masako IZUTA2, Mitsushige SHIBATOUGE2, Chisa NISHIDA1, Naoyuki KAWAI1, Tetuo MARUYAMA1, Hideyuki KITA1, Masatoshi KUDO3

1高松赤十病院腹部超音波室, 2高松赤十字病院消化器内科, 3近畿大学附属病院消化器内科

1Department of Ultrasound Sonograpy, Takamatsu Red Cross Hospital, 2Department of Gastroenterology and Hepatology, Takamatsu Red Cross Hospital, 3Department of Gastroenterology and Hepatology, Kinki University of Medicine

キーワード :

【症例】
65歳,男性.
【既往歴】
高血圧があり内服加療中.
【現病歴】
20xx年11月に便秘傾向であったため浣腸を行ったところ,右鼠径部に膨隆を認め,当院救急外来を受診した.来院時には膨隆部位にごく軽度の圧痛を認めるのみで,触診にて鼠径ヘルニアと診断され,徒手整復を試みたが不可能であったため,精査目的にて腹部超音波検査を施行した.
【来院時血液検査結果】
WBC 11300/μL, RBC 487×104/μL,Hb 15.1g/dL, Plt 19.4×104/μL, T.Bil 0.8mg/dL, AST 19IU/L, ALT 17IU/L, ALP 226IU/L,γ-GTP 25IU/L, Alb 4.3g/dL, CRP 0.10mg/dL, BUN 16.5mg/dL, Cre 0.82mg/dL, UA 5.5mg/dL, Na 140mEq/L, K 4.6mEq/L, Cl 102mEq/L, Ca 9.1mg/dL, CK 85IU/mL, AMY 134IU/L
【超音波検査所見】
嵌頓した腸管の周囲に少量の腹水を認め,ヘルニアの口側に腸液で充満した拡張した小腸を認めた.CDI,PDIでは嵌頓した腸管壁の血流の評価は困難であり,より詳細な血流の評価を行うため,同部位に対しソナゾイド®造影超音波検査を行った.ソナゾイド®造影超音波検査では,血管相で嵌頓した腸管の虚血状態が明瞭に観察され,嵌頓した腸管から離れるにつれ,徐々に腸管壁に血流が観察された.
【経過】
症状と超音波検査所見に乖離を認めたが,上記の検査結果より腸管虚血を伴う嵌頓した鼠径ヘルニアと診断され,同日緊急手術が施行された.術中所見はソナゾイド®造影超音波検査所見と一致し,ヘルニア嚢自体もうっ血〜虚血性変化を伴い,内部は血性腹水と壊死小腸を10cmほど認め小腸切除術を行った.術後の経過は良好で,術後10日目に退院となった.
【考察】
イレウスの診断に超音波検査が有用であることは認知されている.しかし,腸管虚血の診断に関してはCDI,PDIのみでの診断には限界があり,腹水の出現,絞扼,嵌頓の有無等を含めた総合的な評価が必要である.また,手術適応は上記に加え臨床所見や腹部所見等を加えた総合所見で決定されており,ソナゾイド®造影超音波検査でも腸管虚血について診断の一助になると考えられた.
【結語】
非侵襲的に詳細に腸管壁の血流評価を行うことができるソナゾイド®造影超音波検査は,イレウスを含めた腸管虚血の診断に非常に有用であると考えられた.