Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
下部消化管① 

(S551)

真性虫垂憩室炎の1例

A case of True Diverticulitis of the Appendix

上田 信恵1, 徳永 真和2, 嶋谷 邦彦2, 立山 義朗1

Nobue UEDA1, Masakazu TOKUNAGA2, Kunihiko SHIMATANI2, Yoshiro TACHIYAMA1

1独立行政法人国立病院機構広島西医療センター研究検査科, 2独立行政法人国立病院機構広島西医療センター外科

1Department of Clinical Laboratory, The National Hospital Organization Hiroshimanishi Medical Center, 2Department of Surgery, The National Hospital Organization Hiroshimanishi Medical Center

キーワード :

【はじめに】
虫垂憩室炎は本邦では比較的稀な疾患であり,術前診断は困難なことが多い.今回,腹部超音波検査で術前診断し得た真性虫垂憩室炎の1症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
【症例】
63歳男性
【現病歴】
3日前よりむかつきと右下腹部痛が出現し,ロキソニンを服用.一旦痛みが軽減するも再び右下腹部痛が出現したため当院内科受診.
【入院時現症】
体温36.6℃,血圧155/96mmHg,脈拍106回/分,SpO296%.
腹部平坦,軟.右下腹部に圧痛あり.反跳痛や筋性防御なく,腹部に腫瘤を触知しなかった.
【入院時血液所見】
白血球8,800/mm3,CRP14.89mg/dlと炎症反応を認めた.
【腹部超音波所見】
圧痛点直下の虫垂は最大短径11mmと腫大.虫垂中央部〜先端部にかけて内腔から5〜8mm大の低エコー腫瘤が複数突出.それを取り囲むように偏在性の周囲脂肪織の集積像が認められ,虫垂憩室炎が疑われた.また回腸末端にも複数の憩室像を認めた.
【造影CT】
虫垂は12mmに腫大拡張,壁肥厚と周囲脂肪織濃度の上昇を認め,急性虫垂炎が疑われた.
【病理組織学的所見】
虫垂周囲の脂肪織は蜂窩織炎と線維増生を示し,慢性炎症を伴う高度の化膿性炎症像を認めた.虫垂には多発性に憩室あり.憩室部は上皮細胞で被われ,Desminの免疫染色で虫垂憩室壁の固有筋層成分が菲薄ながら維持されていたため,真性虫垂憩室炎と診断された.回腸末端部にも憩室あり.
【考察】
虫垂憩室症は欧米では多くの報告例があるが,本邦では比較的稀である.本邦における頻度は注腸検査の0.08%〜0.34%,虫垂切除例の0.004〜2.1%と報告されている.虫垂憩室に炎症を伴った場合の穿孔率は27.66%と高率であり重症化しやすいため確実な診断が必要である.腹部超音波検査は,圧痛点を確認しながら観察ができ,高周波プローブを使用すれば層構造の詳細な観察が可能なため虫垂憩室炎の診断には有用と考える.