Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
上部消化管 

(S548)

腹部超音波検査による胃食道逆流症児と非胃食道逆流児との比較検討

Comparison with children with gastroesophageal reflux disease and children without gastroesophageal reflux by abdominal ultrasonography

神保 圭佑

Keisuke JIMBO

順天堂大学小児科

Pediatrics, Juntendo University

キーワード :

【目的】
胃食道逆流症(GERD)は胃食道逆流現象(GER)に何らかの合併症を伴うもので,本邦では2006年に小児における診断治療指針が示された.本症の症候診断は困難で,上部消化管造影(MDL),24時間食道pHモニタリング(24pHM)などによる総合診断が重要である.他方,海外の小児例における検討では,腹部超音波検査はGERDの診断において,低侵襲であり,有用であるとする報告が散見される.今回,我々は腹部超音波検査を用い,他の検査法との比較を行うとともに食道・胃の解剖学的解析を行った.
【対象と方法】
対象は2歳以下のGERD患児20人(生後8.0±6.0か月)と非GER児45人(生後9.0±7.0か月).GERDの診断は長引く咳嗽や喘鳴,頻回嘔吐,貧血,体重増加不良などを呈し,胃内生食注水下での超音波検査,MDL,24pHMのいずれかの検査で陽性かつ治療反応性がみられるものとした.
(第1の検討項目)
GERD群内において,胃内生食注水下での超音波検査,MDL,24pHMそれぞれの検査法におけるGERの診断陽性率を比較した.
(第2の検討項目)
GERD群と非GER群それぞれの腹部食道長,His角,下部食道壁厚,下部食道筋層厚,胃噴門部壁厚を腹部超音波検査により測定し,比較した.
【結果】
①腹部超音波,MDLと24pHMの3項目の検査全てを行った13例中,それぞれの検査の陽性率は,超音波検査が12/13(92.3%),MDLが11/13(84.6%),24pHMが8/13(61.5%)であった.②非GER群と比較し,GERD群では腹部食道長が有意(p<0.01)に短く,下部食道筋層は有意(p<0.01)に厚く,また,胃噴門部壁は有意(p<0.01)に薄かった.His角はGERD群では非GER群よりも有意(p<0.05)に大きかったが,下部食道壁厚に有意差は認めなかった.
【考察】
GERDにおける胃内生食注水下での腹部超音波検査の検査陽性率は既存の報告と比べ,ほぼ同等の結果であった.GERD群は非GER群よりも,腹部食道長は有意に短く,His角は有意に大きかった.これは既存の報告と同等の結果であるが,今回の新規の検討では,下部食道筋層厚はGERD群において有意に厚く,胃噴門部壁厚は有意に薄かった.下部食道筋層は成人での報告例と異なり,有意差がみられなかった.
【結語】
腹部超音波検査は,GERDの診断に有用であった.また,腹部食道長,下部食道筋層,胃噴門部壁厚,His角の測定はGERDの診断に有用である可能性が示唆された.今後,症例数を重ねて,さらなる検討を加えていく必要があると思われた.