Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
上部消化管 

(S548)

食道静脈瘤に対する内視鏡的静脈瘤硬化療法における超音波内視鏡の有用性

Usefulness of endoscopic ultrasound for endoscopic injection therapy in esophageal varices

高橋 正憲, 大津 威一郎, 土井 浩達, 鎮西 亮, 熊谷 純一郎, 高田 勇登, 前田 隆宏, 笹島 圭太, 甲嶋 洋平

Masanori TAKAHASHI, Iichirou OTSU, Hirosato DOI, Ryo CHINZEI, Junichirou KUMAGAI, Hayato TAKADA, Takahiro MAEDA, Keita SASAJIMA, Yohei KOSHIMA

さいたま赤十字病院消化器内科

Department of Gatroenterology, Saitama Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)は食道静脈瘤(EV)に対する有効な治療法である.しかし単回のEISでは血栓効果が不十分である症例にもしばしば遭遇し,その要因としてEVに関連する供血路側の血行動態が大きく関与しているものと予想される.そこで今回,治療前のEVに超音波内視鏡(EUS)を施行し,そのEUS所見とEISにおける血栓効果との関連から,治療回数低減化を目的としたEISの治療戦略について考察した.
【対象と方法】
EV合併慢性肝疾患56例(H24.4-H26.12,予防28,出血/待機28)を対象とした.EUS(細径超音波プローブ,20MHz)は全例治療前に行われ,食道胃接合部(EGJ)から下部食道において,EVの形態(孤在型/重積型),EV最大径,貫通静脈・傍食道静脈の有無,そして食道胃接合部(EGJ)直下で観察される供血路側の血管群の相互連続性について評価した.EIS(22/23G針,6cm内視鏡装着バルーン,5%EOI)については硬化剤が供血路(左胃静脈)まで流入かつ5分以上停滞させることが可能であった場合を有効なEISとし,EVが2条以上である場合には時間差注入法を併用した.ちなみに本検討では一回の有効なEISが得られた時点で同日の治療を終了とした.EISの血栓効果については1週間後のEUSで評価し,1回の穿刺で全EVの血栓化が得られた場合を単回群,非血栓化のEVが残存していた場合を非単回群として分類した.なお全EV血栓化後の地固め療法には,エトキシスクレロールによるEISおよびAPCを行った.
【結果】
(1)治療成績:穿刺困難であった6例(5/6例はEV径<1.5mm)を除く50例でEISを行い,32例(64.0%)が単回群,18例(36.0%)が非単回群と判定された.後者についてはその後1-2回の追加EISを行い,EUSにて全EVの血栓化を確認した後に地固め療法を行った.なお治療後のEV累積非再発率(観察期間283.3+175.6日)は80.2%/年であり,累積非出血率については1年で100%,2年で90.9%であった.(2)血栓効果と背景因子との関連:血栓効果と背景因子との関連について検討したところ,非単回群は単回群よりも再発例が多く(p=0.02),初回EISにおける硬化剤注入量(p=0.009),EV最大径(p=0.002)が有意に高値であった.また単回群では全例でEGJ直下に観察されるすべての供血路側の血管群に相互連続性が確認されたのに対し,非単回群では8/18例で主たる血管群とは連続性を持たない孤立した血管群が認められた(p=0.0016).ここで有意差を認めた上記4項目について多変量解析を行うと,EGJ直下で観察される供血路側の血管群の相互連続性のみが血栓効果における有意な関連因子として示された(p=0.003,95%CI 0-0.28).ちなみに供血路側の全ての血管群に相互連続性が確認された42例において硬化剤注入過程における血管外漏出の有無について検討したところ,単回群では23例(71.9%)が硬化剤注入時に血管外漏出なく時間差注入法が可能であったのに対し,非単回群では8例(80.0%)が途中で硬化剤が血管外漏出し,時間差注入法が困難であった(20.0%,p=0.0076).
【考察】
単回穿刺でのEV血栓化範囲は,内視鏡所見に関わらず,EVと供血路側血管群との連続性に依存することが示唆された.すなわちEVと供血路側血管群の位置関係を正確に把握することで効率的なEISが可能となり,治療回数の低減化に繋がるものと考えられた.しかし十分な血栓効果を発揮するためには安定した穿刺針の血管内保持すなわち時間差注入法が重要であり,内視鏡技術の安定も重要であると考えられた.
【結論】
食道静脈瘤に対する効率的な内視鏡的静脈瘤硬化療法には,超音波内視鏡による静脈瘤と供血路側血管群との位置関係の把握が重要である.