Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・血栓塞栓症/その他 

(S543)

心タンポナーデに対し心膜液ドレナージ後に肺血栓塞栓症を来たした一例

A case report;pulmonary embolism followed by pericardiocentesis in patient with pericarditis carcinomatosa

越知 博之1, 山本 毅1, 永井 邦彦2, 北川 元昭2, 二宮 智紀2, 今井 康陽3

Hiroyuki OCHI1, Tsuyoshi YAMAMOTO1, Kunihiko NAGAI2, Motoaki KITAGAWA2, Tomonori NINOMIYA2, Yasuharu IMAI3

1市立池田病院臨床検査科, 2市立池田病院循環器内科, 3市立池田病院消化器内科

1Department of Clinical Laboratory, Ikeda City Hospital, 2Department of Cardiology, Ikeda City Hospital, 3Department of Gastroenterology, Ikeda City Hospital

キーワード :

【症例】
71才 女性
【主訴】
咳嗽の持続
【既往歴】
骨粗鬆症
【現病歴】
2014年7月より咳嗽の持続を自覚,近医にて経過観察中に,乳房の大きさの左右差が出現し10月当院乳腺外来に紹介受診となり,胸腹部CTにて心膜液貯留と右胸水を認め,心エコー検査を施行,心膜液を多量に認め心膜穿刺を目的に循環器内科紹介受診となり同日入院となった.
【入院時現症】
身長158cm 体重53kg BMI:21.2 心拍数93/分 血圧140/89 mmHg 頚静脈怒張(+)左腋窩リンパ節腫大(+)心音:明らかな心雑音聴取せず.肺音:清左右差認めず.両側下腿浮腫(+)
【入院経過】
入院時心エコー検査にて,心膜液が全周性に大量認め,IVC拡大呼吸性変動消失,右房,右室の虚脱と振り子様運動を認めた.左室流入血流速度波形の呼吸性変動50%以上認め心タンポナーデ所見を認めた.
入院第2病日に心膜液ドレナージを施行した.心膜液は血性で癌細胞(adenocarcinoma)
が検出された.心膜液ドレナージ後より呼吸苦認め,SpO2 88%低下した為,リザーバ酸素マスクにて酸素投与10LでSpO2 90%前半まで回復し経過観察していた.翌日,朝食時は鼻カニュラにて酸素6L投与を行っていたが,食後SpO2 83%低下した為,リザーバ酸素マスクにて酸素投与10L変更を行ったが,SpO2の改善なく一時,収縮期血圧が75mmHg低下,抹消のチアノーゼを認めた.動脈血液ガス検査を行ったところPaO2 58Torrと低下認めたため,心室の穿孔もしくは肺塞栓症疑い,緊急で心エコー検査と下肢静脈エコー検査を行ったところ心エコー検査で右室圧上昇認めた.下肢静脈エコー検査では,両側ヒラメ筋静脈に低輝度な血栓を認め肺塞栓と診断.胸部造影CTにて右上行大動脈,下肺動脈に血栓を認めた.肺塞栓の治療として低分子ヘパリン皮下注を行い軽快した.
【考察】
肺塞栓症を起こした原因として,心膜液貯留により静脈血流の鬱滞,悪性腫瘍などの因子により静脈内に血栓が形成され,心膜液ドレナージによって,静脈血流の鬱滞が解除され静脈還流が増加し,静脈内の血栓が遊離し肺動脈へ飛んだと考える.
今回の症例で,緊急に簡易にできる検査として,心エコー検査,下肢静脈エコー検査が非常に有用であった.心膜液ドレナージを施行する場合血行動態が変化する為,下肢静脈血栓の有無を確認する事も重要であると考える.
【結語】
心タンポナーデに対し,心膜液ドレナージ後に肺血栓塞栓症を来たした非常に希な一症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.