Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・冠動脈 

(S541)

運動負荷を契機に発見された冠動脈起始異常の一例

One case of the anomalous origin of the left coronary artery found taking movementload as an opportunity

須田 雄亮1, 藤下 真澄1, 横井 晴美1, 鈴木 昇1, 新居 正基2, 小野 安生2

Yusuke SUDA1, Masumi FUJISHITA1, Harumi YOKOI1, Noboru SUZUKI1, Masaki NII2, Yasuo ONO2

1静岡県立こども病院臨床検査科, 2静岡県立こども病院循環器内科

1Crinical Laboratory, Shizuoka Children’s Hospital, 2Cardiovascular, Shizuoka Children’s Hospital

キーワード :

【はじめに】
冠動脈原基は動脈管周囲の心外膜内に存在する毛細血管が集合して形成されるといわれている.これが正常に形成されない場合,冠動脈奇形が発生することなる.その分類は左回旋枝が右冠動脈洞から起始するものの頻度がもっとも高く冠動脈奇形の1/3を占める.その次が左から右冠動脈起始で約30%,右からの左冠動脈起始は全体の1〜3%とかなり低頻度であり,その走行には①大血管間走行,②心室中隔内走行,③大動脈後方走行,④肺動脈前方走行,の4タイプがある.今回,非常に稀なタイプである左冠動脈のRCC起始,大血管間走行の症例を経験したので報告する.
【症例】
症例は17歳男性.脳動脈奇形の既往あり.2009年に痙攣発作左頭頂葉の出血性病変に対して開頭摘出術施行.その後の脳血管撮影でAVM(動静脈奇形)を指摘されており,残存病変に対して摘出及びクリッピング施行.その後の検査ではAVMの再発は認めていなかった.2013年4月運動中に気分不快を訴え横になっていた際,約1分程度の間代性痙攣発作が出現.当院に救急搬送されるも,来院時意識は清明であり頭部CTでも新たな病変はなかった.2014年2月体育の授業でランニング中突然転倒.鼾を伴う不規則な呼吸をしており痛刺激には反応しなかった.転倒後1-2分でAED装着されAEDの指示のもと胸骨圧迫開始.2回目の解析にて放電.放電後不規則な呼吸善,胸骨圧迫は継続されていた.来院時,気道開通,PR15,SPO2 100%(マスク10 l/min),BP 121/69,NSR,HR94,心音清,BT 36.3であった.頭部CTはfollow中のものと変わりがなく今回のLOCは心因性が疑われた.心エコーでは左の動きは良好であり,特記すべき弁膜症や右心負荷,心膜液貯留も認めなかった.冠動脈エコーではRCAの拡張期に順行血流を確認した.LAD,CXは入口部の同定が困難であり,また,カラードプラでは大動脈,肺動脈間にモザイクカラー像が確認できた.冠動脈起始疑いでMDCT施行したところanomaly origin of LCA(LCA from RCC)intra muralAo-PA間走行を認めた.また,今回のLOCと運動負荷との関連,および壁内走行血管と大動脈交連との関係を調べるために3Dカラー経食道エコー,ドブタミン負荷エコーを実施.10 mcg投与時点でV1〜V3誘導でT波の陰転化を認めたためその時点で終了とした.心負荷増大により冠動脈の血流が減少する結果が示されため早急に心臓外科へ紹介となり2014年3月coronary artery unroofing術施行.術後検査は異常なく退院の運びとなった.followのドブタミン負荷エコーでは40 mcgまで投与するもST変化なし,血流に問題なしであった.
【考察】
無症候な経過を辿る稀な冠動脈起始異常の症例であるが,左主幹部の起始異常に加え冠動脈走行がAo-PA間を辿るという珍しい症例を経験した.このような症例ではfirst attackが致死性の経過を辿る事も十分に考えられる.特に今回は背景に脳疾患の既往もあり,LOCがそちらに結びつけられてしまうと患者にとっては致命的なものであり,心エコーでのスクリーニングの重要性が示峻される結果となった.