Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・冠動脈 

(S540)

巨大冠静洞脈瘤を合併した冠動脈冠静脈瘻の一例

A case report of coronary arteriovenous fistula with giant varix of coronary vein

森本 菜津美1, 吉田 梨沙1, 長谷川 知子1, 橋本 恵美1, 藤原 暢子1, 小松 万姫1, 藤中 早代1, 近平 佳美1, 宝田 明2

Natsumi MORIMOTO1, Risa YOSHIDA1, Tomoko HASEGAWA1, Megumi HASHIMOTO1, Nobuko FUJIWARA1, Maki KOMATSU1, Sayo FUJINAKA1, Yoshimi CHIKAHIRA1, Akira TAKARADA2

1兵庫県立淡路医療センター検査・放射線部, 2兵庫県立淡路医療センター内科

1Department of Laboratory・radiology, Hyogo Prefectural Awaji Medical Center, 2Department of Cardiology, Hyogo Prefectural Awaji Medical Center

キーワード :

近年画像診断法の発達により冠動脈瘻の発見頻度は0.3〜0.8%と増加しているが,冠動脈瘤に合併した冠動脈冠静脈瘻は稀である.今回我々は左回旋枝冠静脈瘤に冠動脈冠静脈瘻を合併した一例を経験したので報告する.
【症例】
73歳男性
【現症歴】
石綿検診にて心膜液を指摘され近医受診.胸部レントゲンにてCTR拡大,心エコー検査にて心膜液と左房後方に6〜7cmの嚢胞状のmassを認め,当院循環器内科を紹介受診となった.
【既往歴】
高血圧,心房細動,真珠腫
【身体所見】
身長163cm,体重63.3kg,血圧117/70mmHg,PR95bpm,SpO2 97%,ラ音なし,軽度収縮期雑音を聴取.
【検査所見】
心電図は心房細動,HR86bpm,優位なST-T変化認めず.胸部レントゲンではCTR72%,CP angleは整.
【心エコー】
明らかな壁運動異常なし,LVEF54%,LVDd50mm,LVDs35mm,左房径44mm.左房後方に69×62mmの嚢胞様エコーを認めた.瘤内へは左回旋枝と思われる血管からの血流を認め,瘤内の血流は右房へ流入していた.左冠動脈は主幹部から回旋枝への分岐直後で24mmと著明な拡大が見られた.また,300ml程度の心膜液を認めた.
【造影CT】
左冠動脈回旋枝の高度拡張を認め,冠状静脈洞と交通,冠動静脈瘻と考えられた.冠状静脈洞に合流する直前で79×62mmと拡張していた.
さらに経食道心エコー,コロナリーCT,冠動脈造影,スワンガンツカテーテル検査で精査を行った.回旋枝の走行は拡張が見られ,♯11付近で冠静脈との交通が考えられた.その先で巨大な瘤を形成しており,瘤内には渦状の血流が確認できた.Qp/Qsは1.36,O2 step upを認めることから左右短絡血流の存在,瘤からRAへの交通が示唆された.
その後手術目的に他院へ転院,冠動脈バイパス術(大伏在静脈−左回旋枝)及び,静脈瘤切除,縫縮,動静脈瘻結紮術が施行された.
【結語】
左回旋枝冠静脈瘤に冠動脈冠静脈瘻を合併した一例を経験した.本症例は左回旋枝のみに拡張と瘤化が認められ,そのほかの冠動脈には拡張病変や強い石灰化などは認めないことから川崎病などの炎症性疾患や動脈硬化性によるものとは考えにくく,先天性の可能性が示唆された.