Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・心臓腫瘍 

(S539)

巨大右房腫瘍により発見されたびまん性大細胞B型リンパ腫の一例

Diffuse large B-cell lymphoma that was discovered by giant right atrial tumor

奈良 育美, 飯野 貴子, 新保 麻衣, 佐藤 和奏, 渡邊 博之, 伊藤 宏

Ikumi NARA, Takako IINO, Mai SIMBO, Wakana SATO, Hiroyuki WATANABE, Hiroshi ITO

秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学・呼吸器内科学

Department of Cardiovascular and Respiratory Medicine, Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

【症例】
63歳女性.
【現病歴】
平成24年7月上旬より労作時の息切れを自覚,改善しないため7月下旬に近医を受診した.胸部レントゲン写真で右側胸水を認め,胸部CTにて右房内腫瘍を指摘されたため,精査加療目的に当科に入院した.
【検査所見】
心臓超音波検査では,右房内を占拠し,三尖弁輪を越え右室内にも及ぶ70×68mmの巨大腫瘤を認め,心臓腫瘍を疑った(図1).さらに,傍胸骨アプローチ長軸・短軸像で,右房室間溝に可動性のある辺縁不整の腫瘍様構造物が観察され,腫瘍の心外への進展が疑われた.心エコー上,腫瘍の付着部位は判別困難であった.胸部CTでも,右房を主座とする75mm大の巨大分葉状腫瘍が確認された.腫瘍は右室のみならず上大静脈へも進展しており,PET-CTを施行すると腫瘍に一致したFDGの高集積を認めた.心外にFDGの集積は認めなかった.冠動脈造影では,右冠動脈から腫瘍へのfeeding arteryを認めた.以上より,心臓腫瘍が右房内を占拠したことによる右心不全と診断した.
【経過】
腫瘍が完全に三尖弁に嵌頓すると血行動態が破綻することが予想されたため,腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は,右室自由壁を穿破,右房外へ突出しており一部臓側心膜にも浸潤していた.右房を切開し,多房性,充実性の腫瘍を摘出した.免疫染色の結果,CD20(+), CD5(-), CD10(-), BCL6(+), MUM-1(+)かつMIB-1 index 95%と非常に高い増殖能を示し,びまん性大細胞性Bリンパ腫(diffuse large B cell lymphoma : DLCBL)と診断した.術後R-CHOP療法を6クール施行し,CT上完全寛解を得た.
【考察】
本症例は,右心不全症状を契機に発見された心臓原発悪性リンパ腫であった.病状の進行により血行動態が破綻するリスクがあったが,心エコーによる早期診断ののち腫瘍摘出術を施行し,救命することができた.腫瘍の自由壁への進展や,心膜への浸潤を疑わせる所見を認めた場合,悪性リンパ腫の可能性を考慮する必要がある.
【結語】
巨大右房腫瘍を契機に発見され,びまん性大細胞B型リンパ腫の一例を経験したのでここに報告する.