Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・心臓腫瘍 

(S538)

超音波で診断に至らなかった心臓横紋筋肉腫の一例

A case of rhabdomyosarcoma which difficult to diagnose

宮木 真里1, 松原 剛一2, 赤坂 俊彦2, 佐藤 明美1, 山本 一博2

Mari MIYAGI1, Kouichi MATSUBARA2, Toshihiko AKASAKA2, Akemi SATOU1, Kazuhiro YAMAMOTO2

1鳥取大学医学部附属病院検査部, 2鳥取大学医学部病態情報内科

1Clinical Laboratory, Tottori University Hospital, 2Division of Cardiovascular Medicine, Tottori University Faculty of Medicine

キーワード :

【症例】
55歳男性,主訴は労作時呼吸苦.37度台の発熱後に労作時息切れ,夜間咳嗽を自覚するようになり近医受診.胸部CTで左房内に5*3cm大の腫瘤を認め精査加療目的に当院循環器内科紹介受診となった.来院時には血圧135/90mmHg,体温 36.9℃,脈拍96回/分であった.聴診にて明らかな心雑音は聴取されなかった.胸部レントゲンではCTR 52%,両側胸水と肺うっ血所見を認めた.心電図は洞調律で明らかな異常所見は認めなかった.血液検査ではBNP 61.6pg/mlと軽度高値であった.
【心エコー検査】
経胸壁心エコーでは,左房内に45*25mmの腫瘤を認め,左房後壁に比較的広範囲に付着していた.腫瘤先端部は可動性に富んでおり,拡張期に腫瘤は僧帽弁弁輪まで到達.僧帽弁通過血流平均圧較差は8mmHgと上昇していた.また軽度肺高血圧所見を認めた.左室収縮能は保たれており,有意な弁膜症は認めなかった.翌日行った経食道エコー検査でも同様に,左房後壁に付着し左房内を占拠する腫瘤を認め,付着幅は13-16mm程度であった.腫瘤表面は平滑-やや粗造,内部エコーは不均一であった.腫瘤内部に明らかな血流信号認めなかった.また,左房壁が全周性に肥厚(3-4mm程度)している所見が観察された.
【手術所見】
腫瘤は左房後壁に付着していたが,心外への浸潤所見は認めなかった.左房壁は全周性に肥厚しており浸潤が疑われたため左房壁内側は心筋露出部まで切除し,ウシ心膜パッチをあて手術終了となった.
【病理所見】
術中迅速検査では肉腫,その後追加で行われた免疫染色にて横紋筋肉腫と診断された.
【考察】
心臓悪性腫瘍の発生頻度は剖検例の約0.02%であり,その中でも横紋筋肉腫は20%と稀な腫瘍である.心臓腫瘍は特徴的な臨床症状はなく,画像検査で偶然見つかることが多い.本症例は左房にできた腫瘍により左室への流入血流が妨げられたことによるMS様の血行動態および肺高血圧の出現,心不全症状にて発見につながった.経胸壁および経食道エコー所見のみでは良悪の判定は困難であったが,腫瘤に茎はなく左房後壁に比較的広範囲に付着していたこと,経食道エコーで左房壁が全周性に肥厚していたことから腫瘤の左房壁浸潤を考慮し,悪性を強く疑わなければならない所見であったと考える.