Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・心筋症/その他 

(S535)

薬物治療に伴う改善経過を経胸壁心エコー図検査で観察し得たレフレル心筋炎の一例

A case of Loffler’s endocarditis observed the improvement by using transthoracic echocardiography

有吉 亨1, 和田 靖明1, 田中 伸明2, 藤井 彩乃1, 平山 香莉1, 奥田 真一3, 村上 和華子3, 明連 武樹3, 山崎 隆弘1, 矢野 雅文3

Toru ARIYOSHI1, Yasuaki WADA1, Nobuaki TANAKA2, Ayano FUJII1, Kaori HIRAYAMA1, Shinnichi OKUDA3, Wakako MURAKAMI3, Takeki MYOUREN3, Takahiro YAMASAKI1, Masafumi YANO3

1山口大学医学部附属病院超音波センター, 2山口大学大学院医学系研究科病態検査学, 3山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学

1Ultrasound Examination Center, Yamaguchi University Hospital, 2Department of Clinical Laboratory Sciences, Yamaguchi University Graduate School of Medicine, 3Department of Medicine and Clinical Science, Yamaguchi University Graduate School of Medicine

キーワード :

症例は65歳女性.2か月前よりめまい,吐き気が出現し近医を受診するも好酸球増加の他,異常所見は指摘されなかった.1か月前より新たに咳嗽,喀痰が出現し近医を受診,好酸球増加(5000/μl)は遷延しており経胸壁心エコー図検査(TTE)にて左室内異常構造物を認めたため精査目的にて当院紹介となった.
来院時血液検査上,好酸球は5300/μlと増加しIgGの軽度上昇を認めた.TTEでは心尖部に心筋の性状と異なる高輝度異常構造物を認め,心周期に合わせ変形して観察され比較的柔らかい構造物が示唆された.また左室左室流入血流速度波形(TMF)はE波優位でありE/Aは2.1と上昇,E波deceleration timeは103msと顕著に短縮しておりrestrictive patternを呈していた(Figure a, b).FDG PETおよび心臓MRI検査においてもTTEと一致し,左室心尖部肉柱間に濃染域を認めたことから好酸球増多に伴い心腔内への高輝度異常構造物を生じ,restrictive physiologyを呈する疾患としてレフレル心内膜炎と診断された.
レフレル心内膜炎は異常構造物に血栓が含まれるといわれており抗凝固療法が開始され,またステロイド治療の有効性が知られており1mg/kg/dayにてステロイドが開始され維持量をめざし漸減された.治療効果判定および経過観察目的にて治療開始28日および64日目に施行されたTTEでは,心尖部異常構造物の縮小傾向を認めるとともに,TMFはpseudo-normal patternからimpaired relaxation patternへの改善が見られ,ステロイドおよび抗凝固療法の治療効果を経時的に観察し得た(Figure c, d).
好酸球増加による心腔内異常構造物およびrestrictive physiologyをTTEにて同定することで比較的珍しいレフレル心内膜炎の診断に至った症例を経験した.画像分解能の高いエコー像およびTMFを前回画像の断面と合わせ描出することで診断および治療効果判定・経過観察に心エコー図検査の有用性が発揮された症例であった.