Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・心筋症/その他 

(S533)

顕性化前後を心エコー図検査にて観察し得た続発性AL型心アミロイドーシスの1例

One cases of secondary AL type cardiac amyloidosis which is obtained by observing the before and after overt reduction in echocardiography

河野 裕樹1, 坊 直美1, 川端 直樹1, 岡部 佳孝2, 三田村 康仁2, 音羽 勘一2, 原田 憲一3

Hiroki KOHNO1, Naomi BOU1, Naoki KAWABATA1, Yoshitaka OKABE2, Yasuhito MITAMURA2, Kanichi OTOWA2, Kenichi HARADA3

1市立敦賀病院医療技術部検査室, 2市立敦賀病院循環器科, 3金沢大学形態機能病理学教室

1Medical Technology Department Laboratory, Municipal Tsuruga Hospital, 2Cardiovascular Department, Municipal Tsuruga Hospital, 3Form Function Department of Pathology, Kanazawa University

キーワード :

【はじめに】
アミロイドーシスとは,異常蛋白「不溶性アミロイド蛋白」が全身の臓器に沈着し機能障害を起こす病気の総称を指し,本邦の有病率は人口100万人当たり約6.1人と推定されている.心アミロイドーシスは,この異常蛋白が心筋に蓄積し心機能障害を引き起こした病態をいう.本疾患による心不全発症後平均予後は非常に悪く,死亡までの平均生存期間は1年半程度との報告もある.また,本疾患のスクリーニングには心電図検査や心エコー図検査が有用とされているが,心アミロイドーシスの顕性化前では,特徴的な所見が捉えられず早期診断に至らないケースが多い.今回,顕性化前後を心エコー図検査にて観察し得た続発性AL型心アミロイドーシスの1例と,その顕性化前の心エコー検査における診断可否の検討について報告する.
【症例】
73歳女性
【既往歴】
高血圧,脂質異常症
【家族歴】
心疾患,脳血管疾患,突然死の家族歴なし
【現病歴】
2012年6月,検診の心電図異常(ST-T異常)にて当院へ紹介となる.精査目的で施行した心エコー図検査結果はasynergy(−),LVEF75%,IVSd/LVPWd=9/10mm,E/E’=22と拡張障害を認めるのみであった.冠動脈CTにて左回旋枝の狭窄を認めたことから,狭心症と診断し経過観察となったが,その後は大きな心症状もなく他院にてfollow中であった.しかし2014年4月初旬より咳嗽,倦怠感を認め労作時息切れが増悪したことから同年4月下旬,近医より心不全疑いで再度紹介となった.
【来院時身体所見】
意識清明,聴診で両側湿性ラ音を聴取し,下腿浮腫と頸静脈怒張を認めた
【来院時検査所見】
○検体検査:尿タンパク1+,高感度トロポニンI 0.111ng/mlと陽性,BNP 1469pg/dlと高値○12誘導心電図:全誘導低電位,V1〜V4でQSパターン○心エコー図検査:diffuse hypokinesis,LVEF37%,IVSd/LVPWd=13/15 mm,E/E’=19と前回と比較し明らかに心機能は低下し,新たに心筋内部のgranular sparkling echo,少量の心嚢水を認めた.
【経過】
心筋炎及び虚血性心疾患,各種心筋症の鑑別目的で心臓カテーテル検査を施行した.有意狭窄は認められなかったが,同時に行った心筋生検病理診断で,無構造物質の沈着が目立ちアミロイド染色が陽性であったこと,遺伝子検査でL鎖が異常高値であったことからAL型心アミロイドーシスと診断した.その後,精査加療目的で高度医療機関へ転院となり,本症例は多発性骨髄腫続発性と診断され治療が開始された.しかし,同年6月,突然原因不明の心肺停止状態となり永眠された.
【考察】
心アミロイドーシスの診断において,心エコー図検査における特徴的所見が有用である.本症例は以前にも精査されているが,わずか2年で著明な心形態変化や低心機能状態となっている.しかし拡張障害所見は顕性化前後で認められ,数値の上では大きな差異が得られなかった.このことから,2年前すでにアミロイド沈着による心筋障害が始まっていたことも否定できないが,拡張障害所見のみではアミロイドーシスを予測することは困難であったと考える.
また,今回新たな心エコー図指標VVF(vector velocity Field),TMAD(tissue mitral annular displacement),speckle trackingを用いて,他の拡張障害を有する症例の中から,心アミロイドーシスを鑑別し得るかどうかの分析を試みた為加えて報告する.
【まとめ】
本疾患は比較的稀な疾患で生前に正確な診断を付けることは難しいとされている.今回顕性化前後の心エコー図画像を観察しえたことは貴重であると考える.