谷 久弥子¹, 穂積 健之², 上杦 裕子³, 波元 智香¹, 有馬 隆幸¹, 廣田 峰基⁴, 内田 剛敬⁴, 胡内 一郎⁴

Kumiko TANI¹, Takeshi HODUMI², Hiroko UESUGI³, Chika NAMIMOTO¹, Takayuki ARIMA¹, Takamoto HIROTA⁴, Takahiro UCHIDA⁴, Ichiro KOUCHI⁴

¹大阪府済生会野江病院臨床検査科, ²和歌山県立医科大学循環器画像動態診断学, ³大阪府済生会野江病院血液・リウマチ内科, ⁴大阪府済生会野江病院循環器内科

¹Department of Clinical Laboratory, Osaka Saiseikai Noe Hospital, ²Division of Cardiovascular Imaging and Physiology, Wakayama Medical University, ³Department of Hematology・Rheumatology, Osaka Saiseikai Noe Hospital, ⁴Department of Cardiology, Osaka Saiseikai Noe Hospital

キーワード :

症例は77歳女性．慢性関節リウマチにて血液内科で治療中であったが，発熱と全身倦怠感にて受診した．受診時，心雑音・肺ラ音は聴取されず．血液検査では，炎症所見がみられた．抗菌薬治療が行われたが，発熱・炎症所見の改善はみられなかった．既往に大動脈弁置換術と冠動脈バイパス術を施行されているが，心エコー図では，大動脈弁位生体弁や僧帽弁に異常所見はみられなかった．しかし，血液培養にてMRSAが検出され，抗菌剤治療が行われた．その後，造影CTを施行したところ，左心房左側・右心室尾側に嚢胞様病変がみられ，膿瘍が疑われた．経胸壁心エコー図では，僧帽弁後尖にmass echoが認められ，疣贅と考えられた．さらに，僧帽弁輪部から左房後壁側にはechogenicな腔がみられた（図1，矢印）．経食道心エコー図を施行すると，僧帽弁後尖と弁輪部側後方に疣贅と考えられるmass echoがみられた．さらに，弁輪部側後方に心筋の解離，その外方と右心室側面にechogenicな腔が認められ，弁輪部膿瘍が進展して弁輪部が解離し，外方に血腫を生じていると考えられた（図2，矢印）．その時点で全身状態不良で，頭部MRIで脳梗塞急性期所見がみられ，手術を待機していたところ，病状が悪化して永眠された．弁輪部膿瘍は，感染性心内膜炎の重篤な合併症であるが，大動脈弁輪部に比べて，僧帽弁輪部膿瘍に遭遇することはまれである．今回の症例は感染性心内膜炎に合併した僧帽弁輪部膿瘍が，急速に進展したと考えられ，心エコー図にてそれを観察しえたので報告する．