Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・感染性心内膜炎/その他 

(S530)

線維三角部に瘤形成を生じ,破裂に至った感染性心内膜炎の1症例

Seeding, In bud, Flowering;Echocardiographic follow-up of a Mycotic Aneurysm of Mitral-Aortic Intervalvular Fibrosa

荒木 将裕, 沼口 宏太郎, 小村 聡一朗, 宮崎 明信, 畠 伸策, 森 龍祐, 植田 知宏, 田山 栄基

Masahiro ARAKI, Koutarou NUMAGUCHI, Souichirou OMURA, Akinobu MIYAZAKI, Shinsaku HATAKE, Ryuusuke MORI, Tomohiro UEDA, Eiki TAYAMA

国立病院機構九州医療センター循環器科

Cardiology, Kyushu Medical Center

キーワード :

【はじめに】
感染性心内膜炎(以下IE)は抗生剤による感染の制御が不十分であると,弁などの心臓構造の破壊が進みやすい.今回,我々は大動脈弁閉鎖不全症を基礎心疾患とし,IEを発症した症例を経験した.本症例では抗生剤の加療にて良好な感染のコントロールが得られたにもかかわらず,線維三角部に瘤を形成し,穿孔に至った経過を観察することができたので報告する.
【症例】
76歳女性.60歳頃に大動脈弁閉鎖不全症を指摘されたが,定期的なエコー検査は行われていなかった.約1週間前に全身倦怠感および38度台の発熱を,近医で炎症所見の上昇も認め,経過観察を行われていた.しかし,症状および炎症所見の増悪を認めたため,精査・加療目的に当院紹介受診となった.不明熱の精査として施行された胸腹部造影CT検査で脾梗塞を認めた.IEを疑い施行した経胸壁および経食道心エコー検査では,大動脈弁右冠尖の高度石灰化を伴う大動脈弁閉鎖不全,そして僧房弁前尖(A3)の変形と軽度の僧房弁閉鎖不全を認めるのみで,疣贅や弁周囲膿瘍などは明らかではなかった(図A).しかし,Duke臨床診断基準のうち,大基準1つ(血液培養陽性),小基準3つ(基礎心疾患,脾梗塞,発熱)を満たしていたため,IEに準じて抗生剤による加療を開始した.その後,約6週間抗生剤による加療を継続し,炎症所見は徐々に低下し陰性化した.その間も経胸壁心エコー検査での経過観察では,弁逆流の増悪や疣贅の出現,弁周囲感染は認めなかった.しかし,退院前に施行した経胸壁・経食道心エコー検査で繊維三角部に瘤形成を認め(図B),同部位には大動脈弁逆流ジェットの吹き込みを認めた.この時点では瘤の明らかな穿孔は認められなかった.しかし,その後,労作時息切れの増悪を生じ,聴診でも心尖部に新たな収縮期雑音を認めるようになった.再検した心エコー検査では感染性瘤が穿孔し,同部に加速血流を認めた(図C).感染性瘤の穿孔により左房負荷を生じ,心不全症状の増悪を来していると考え,早期に心臓外科にて手術(瘤のパッチ閉鎖+大度脈弁置換術)が施行された.術後経過は良好である.
【考察】
感染性心内膜炎自体は稀な疾患ではないが,感染性瘤を活動期ではなく治癒期に形成し,穿孔した症例を経験した.IEにおける定期的な聴診や心エコー検査でのフォローの重要性を改めて認識させられた症例と考えられた.