Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・弁膜症2 

(S528)

上行大動脈置換部の仮性動脈瘤にて再手術を施行した42年前の大動脈弁位ボール弁の一例

Ascending aortic pseudo-aneurysm in a patient with an aortic Braunwald-Cutter ball valve prosthesis implanted 42 years previously

湯之上 真吾1, 水上 尚子1, 寺岡 幸美1, 茶圓 秀人2, 堀添 善尚2, 植屋 奈美2, 髙﨑 州亜2, 湯淺 敏典2, 木佐貫 彰3, 大石 充2

Shingo YUNOUE1, Naoko MIZUKAMI1, Yukimi TERAOKA1, Hideto TYAEN2, Yoshihisa HORIZOE2, Nami UEYA2, Kunitsugu TAKASAKI2, Toshinori YUASA2, Akira KISANUKI3, Mitsuru OOISHI2

1鹿児島大学病院検査部, 2鹿児島大学大学院医歯学研究科心臓血管・高血圧内科学, 3鹿児島大学医学部保健学科

1Clinical Laboratory, Kagoshima University Medical Hospital, 2Cardiovascular Medicine and Hypertension, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences, 3Health Science, Kagoshima University Faculty of Medicine School

キーワード :

【症例】
61歳 男性
【主訴】
前胸部および疼痛
【現病歴】
1972年(19歳時)に大動脈弁閉鎖不全症に対して,大動脈弁置換術(ボール弁Braunwald-Cutter弁)を行った.2001年には急性大動脈解離(Stanford A型,DeBakeyⅡ型)にて,上行大動脈置換術が施行され,その際に腹部大動脈瘤を指摘された.年1回の経過観察にて,最大径が50mmを超えたため,2007年に腹部大動脈瘤に対してY字グラフト置換術が施行された.2014年6月より左側胸部に鈍痛を自覚し,精査のため施行した単純CTの所見で,人工血管の周囲をラッピングした血管壁と人工血管の間に間隙がある可能性が指摘された.精査予定であったが,前胸部および疼痛が出現したため,当院へ緊急入院となった.
【心エコードプラ所見】
大動脈弁位機械弁(ボール弁)の機能は良好であったが,バルサルバ洞は54mmと著明な拡大がみられた.さらに上行大動脈人工血管置換部中枢側吻合部の右前方にエコーフリースペースがあり,拡大した弁輪部と人工弁の間から人工血管外へと漏出する異常血流が観察された.また,人工血管の中枢側は,収縮期に人工血管壁が内側方向へ可動する拍動を呈しており,吻合部の破綻による人工血管外への血流漏出が疑われた.また,左室は63mmと拡大し,僧帽弁はtetheringにより高度逆流がみられた.
【造影CT所見】
上行大動脈の人工血管とラッピングされた瘤壁の間に血流の流入があり,中枢側吻合部近傍から造影剤の突出像を認めたため,上行大動脈置換部中枢側吻合部の仮性動脈瘤と診断され,準緊急で再手術となった.
【術中所見】
42年前に置換されたボール弁は無傷であったが,上行大動脈の人工血管置換部の中枢側吻合部(右前方)が外れており,同部位より左房,右房,上大静脈の心嚢内に仮性動脈瘤を形成していた.仮性動脈瘤の内膜を切除し,Bentall術(SJM standard 25mm+Gelweave Valsalva graft 28mm)が施行された.僧帽弁は形成術を試みたが,弁輪のひずみによる逆流が残存したため,最終的には人工弁置換術(SJM 27mm)が施行された.
【結語】
上行大動脈置換部の仮性動脈瘤の診断に,心エコードプラ法が有用であった,42年前の大動脈弁位ボール弁の一例を経験したので報告する.