遠藤 桂輔¹, 丸尾 健², 横田 佳代子¹, 福 康志², 島本 健³, 清水 速人¹, 後藤 剛², 門田 一繁², 小宮 達彦³, 光藤 和明²

Keisuke ENDO¹, Takeshi MARUO², Kayoko YOKOTA¹, Yasushi FUKU², Takeshi SHIMAMOTO³, Hayato SHIMIZU¹, Tsuyoshi GOTO², Kazushige KADOTA², Tatsuhiko KOMIYA³, Kazuaki MISTUDO²

¹公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院臨床検査技術部, ²公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院循環器内科, ³公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院心臓外科

¹Clinical Laboratory, Kurashiki Central Hospital, ²Cardiovascular Medicine, Kurashiki Central Hospital, ³Cardiac Surgery, Kurashiki Central Hospital

キーワード :

【症例】
87歳，女性．
【現病歴】
2005年12月に胸痛を自覚し，近医受診．不安定狭心症にて冠動脈バイパス術（CABG）を施行された．2012年8月にフォローアップで施行された心エコー検査で大動脈弁狭窄症（AS）の進行を認めたが症状なく経過観察されていた．2013年8月から倦怠感認めるようになったため，経カテーテル大動脈弁留置術（TAVI）の適応に関して精査加療目的に当院紹介となった．
【受診後経過および治療】
経胸壁心エコー（TTE）で，大動脈弁は3尖で3尖とも著明に石灰化していた．大動脈弁のpeak velocity 4.9m/s，mean PG 62mmHg，連続の式により求めた大動脈弁口面積0.65cm2とsevere ASを認めた．CABGの既往があり，開胸による外科的な大動脈弁置換術はリスクが高く，TAVIの適応と判断した．大動脈弁輪径は3D経食道心エコー（TEE）では，面積から求めた弁輪径21.1mm，造影CTで面積から求めた弁輪径23.3mmでありSapien XT 23mmをnominal volumeで留置する方針となった．最初nominal volumeで留置したところ，TEEでmoderateの弁周囲逆流を認めた．+1cc追加して後拡張を施行したが逆流は著変なく，さらに+2cc追加したところ，弁口逆流がtrivial出現したが，弁周囲逆流はmildまで減少した．術後1週間後に施行したTTEで，弁周囲逆流はmoderateまで増悪していた．
【考察】
Sapien XT 23mmを留置後，急激に弁周囲逆流が増悪した症例を経験した．原因としては+2ccという過度な後拡張によりステントがrecoilし，弁輪とステントの間にgapを来したのではないかと推測した．