Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・弁膜症1 

(S525)

外傷後16年を経過し診断・治療に至ったtraumatic TRの1症例

A Case of Tricuspid Valve Regurgitation Diagnosed and Repaired 16 Years After Blunt Chest Trauma

米田 智也1, 土井 孝浩1, 牧山 武2, 木下 秀之3, 坂口 仁寿4, 平尾 慎吾4, 南方 謙二4, 木村 剛2, 坂田 隆造4, 一山 智1

Tomoya YONEDA1, Takahiro DOI1, Takeru MAKIYAMA2, Hideyuki KINOSHITA3, Hisashi SAKAGUCHI4, Shinngo HIRAO4, Kenji MINAKATA4, Takeshi KIMURA2, Ryuzo SAKATA4, Satoshi ICHIYAMA1

1京都大学医学部附属病院検査部, 2京都大学医学部附属病院循環器内科, 3京都大学大学院地域医療システム学講座, 4京都大学医学部附属病院心臓血管外科

1Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Kyoto University Hospital, 3Department of Community Medicine Supporting System, Kyoto University Graduated School of Medicine, 4Department of Cardiovascular Surgery, Kyoto University Hospital

キーワード :

【はじめに】
三尖弁閉鎖不全症は左心不全,肺高血圧,心房細動などによる右心室の拡張
または右心不全による機能的に生じる二次性のものが圧倒的に多く,一次性のものは少ない.
【症例】
症例は45歳の女性,29歳時に交通事故,脳挫傷,肺挫傷にて長期入院歴あり.その際明らかな異常を指摘されず.44歳時に健診にて心雑音を指摘され,近医受診し,心臓超音波検査にて右心系拡大,三尖弁逆流を認めたが,自覚症状なく,経過観察となっていた.44歳時より,労作時息切れと動悸出現し精査加療目的にて当院紹介となった.<入院時現症>身長:155cm,体重:53kg,心拍数:66bpm整,血圧:107/71mmHg,第3肋間胸骨左縁で最強の収縮期雑音(LevineⅢ/Ⅵ)を聴取,両側呼吸音清,両側下腿に軽度のedemaを認めた.胸部X線では心胸郭比49%,両側CPA sharp,両側肺野clearであった.12誘導心電図ではHR 66bpm,洞調律,iRBBB,Ⅱ誘導でP波増高,V1-3で陰性T波を認めた.血液検査結果ではクレアチニンは0.89mg/ml と軽度上昇,BNPは68.2pg/mlであった.心臓超音波検査では,LVDd/LVDs:30/18mm,IVSTd/RWTd:8/8mm,LVEF(Teichholz法):75%,右室,右房は著明に拡大し,左室は拡張期優位に右室からの圧排を認めた.高度の三尖弁逆流を認め,TRPGは40mmHgであった.三尖弁前尖に断裂腱索痕と逸脱を認め弁尖は離開し,同部位からの高度な逆流を認め,さらに前尖の弁輪部側はpouch状に変形し穿孔を認め同部位からも逆流を認めた.三尖弁弁輪径は拡大を認めたが,三尖弁の位置異常は認めずEbstein奇形は否定的であった.冠動脈造影CT検査では有意な冠動脈狭窄,明らかな心筋脂肪変性や三尖弁位置異常は認めなかった.MRI検査では右室・右房の拡大を認めるが,右室瘤を認めず.明らかな心筋脂肪変性は認めなかった.鑑別疾患として不整脈原生右室心筋症,Ebstein奇形,カルチノイド心疾患,肺高血圧症などが上げられたが,いずれも該当せず,病歴・身体所見・検査所見から外傷性三尖弁閉鎖不全症が疑われた.この症例に対し三尖弁形成術が施行された.手術所見では三尖弁は弁輪拡大.前尖の弁輪部に大きな孔を認め,その辺縁は弁輪・右房壁の解離によりpocketを形成していた.前尖弁尖にも2ヶ所の小孔を認めた.また,前尖に断裂腱索痕と前尖全体で逸脱を認めた.術後の心臓超音波検査では三尖弁の可動性およびcoaptationは良好,逆流は殆ど消失し,左室短軸画像では拡張期に左室を圧排する容量負荷所見も消失した.
【考察】
非穿通性心臓外傷による弁損傷は大動脈弁が一番多く続いて僧帽弁,三尖弁の順とされ三尖弁の損傷は稀であるとされている.三尖弁単独の損傷の場合,症状の進行が緩徐であることが多く,長年診断されずに放置される可能性があり,手術の時期を逸することは,予後を悪化させる可能性があると考えられ,早期の診断と治療(手術)が重要であると考えられた.今回,我々は外傷後16年を経過し三尖弁形成術を施行するに至った症例を経験したので報告する.