Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・弁膜症1 

(S524)

大動脈弁一尖弁様の形態変化をした大動脈弁二尖弁の1症例

A case of bicuspid aortic valve changed to unicuspid aortic valve

宗久 佳子1, 鎌田 ななみ1, 宗久 雅人1, 千葉 啓克1, 中西 徹1, 田中 郁信2, 千田 佳史2, 佐藤 匡也3, 山本 浩史4, 伊藤 宏5

Yoshiko MUNEHISA1, Nanami KAMATA1, Masato MUNEHISA1, Yoshikatsu CHIBA1, Tooru NAKANISHI1, Ikunobu TANAKA2, Yoshifumi CHIDA2, Tadaya SATO3, Hiroshi YAMAMOTO4, Hiroshi ITO5

1由利組合総合病院循環器内科, 2秋田県成人病医療センター心臓血管外科, 3秋田県成人病医療センター循環器科, 4秋田大学医学部附属病院心臓血管外科, 5秋田大学医学部附属病院循環器内科

1Cardiology, Yurikumiai General Hospital, 2Cardiovascular Surgery, Akita Medical Center, 3Cardiology, Akita Medical Center, 4Cardiovascular Surgery, Akita University Hospital, 5Cardiology, Akita University Hospital

キーワード :

【症例】45歳男性.【主訴】
faintness.
【経過】
幼少期に扁桃腺炎,肺炎,腎盂腎炎の既往あり.中学生時に大動脈弁閉鎖不全症と診断されたが放置.10年前に失神歴あり.2014年9月に繰り返すfaintnessのため当科を初診.受診時,胸部2〜3LSBに収縮期雑音,拡張期雑音を聴取.心エコー検査にてEF 57.1%,壁運動異常を認めず,大動脈弁および左室流出路にかけての高度石灰化を認めた.大動脈弁左冠尖と右冠尖,右冠尖と無冠尖は連続して癒合しており,同部位にも高度の石灰化を認めた.左冠尖と無冠尖の間には,円形の1.23cm2の開口が認められ,同部位にて重症の大動脈弁閉鎖不全症,および圧較差70.1mmHgの大動脈弁狭窄症がみられた.上記所見から大動脈弁一尖弁を疑い,3次元経胸壁・経食道エコーを施行.無冠尖,右冠尖のrapheと,その弁輪部に石灰化を認めた.右冠尖と左冠尖とのraphe部分は高度の石灰化を伴い,その中央部に石灰化による盛り上がりが認められた.左冠尖の弁輪部にも高度の石灰化を認めた.長軸にて収縮期に開口部付近でdomingが認められたが,doming部位での開口自体を捉えることはできなかった.CTでも確認を試みるも,高度な石灰化も影響してエコー以上の画像は得られなかった.上記より大動脈弁一尖弁疑いの診断で大動脈弁置換術を施行した.
手術中,左冠尖と右冠尖のraphe部分の石灰化による盛り上がり部分に,盲端の穴を認めた.また,左冠尖の弁輪部の高度石灰化部分にも穴を認め,その穴は心内膜に沿う解離様に2cmの深さがあり,やはり盲端となっていた.弁輪部の石灰化も含め切除し,生体弁に置換して終了.盲端部は感染性心内膜炎の自然治癒後(膿瘍部)の所見と酷似しており,手術所見からは無冠尖と右冠尖との間にrapheを認める左右型大動脈弁二尖弁が,感染性心内膜炎後に高度石灰化を伴い一部癒着したため,大動脈弁一尖弁様に変化したことが考えられた.
【考察】
大動脈弁一尖弁の多くは,強い石灰化を伴うことが少ない.心エコー機器の進歩から術前段階での大動脈弁一尖弁の診断が可能となってきているが,石灰化をともなった症例では慎重な観察が必要と思われる.