磯谷 彰宏, SCHAU Thomas, NEUSS Michael, SCHOEPP Maren, BUTTER Christian

Akihiro ISOTANI, Thomas SCHAU, Michael NEUSS, Maren SCHOEPP, Christian BUTTER

Department of Cardiology, Heart Center Brandenburg

キーワード :

【目的】
僧帽弁閉鎖不全症による容量負荷に対する心臓の適応が性別によって異なるかは，明らかでない．我々は僧帽弁閉鎖不全症患者において，性別による左室と右室の形態的・機能的差異を調査した．
【対象と方法】
本研究は，有症候性（NYHA III度又はIV度）の中等症から重症および重症僧帽弁閉鎖不全症患者86人を対象とした．対象患者は2009年3月から2014年4月の間に経皮的僧帽弁形成術を施行された高リスク群である．男性患者は46人，女性患者は40人であった．左室・右室の形態および機能は経胸壁心エコー図検査により術前に評価した．
【結果】
男性患者は女性患者に比して体表面積が有意に広く（2.0±0.2 m2 vs. 1.7±0.2 m2，P＜0.001），有意に若く（77±8 yeas vs. 81±9 years, P=0.050），有意に良好な腎機能を有していた（CKD stage IV or V; 2％vs. 20％，P=0.011）が，心不全の重症度は同等であった（NYHA class IV 37％vs. 35％，P=1.000またNT-proBNP 2829 pg/ml［IQR 1676 - 4624 pg/ml］vs. 2607 pg/ml［IQR 1448 - 4118 pg/ml］，P=0.531）．表に示す如く，体表面積で補正した左室拡張末期容積（LVEDVi; 62±16 ml/m2 vs. 47±11 ml/m2，P＜0.0001）および左室収縮末期容積（LVESVi; 28±9 ml/m2 vs. 21±6 ml/m2，P＜0.0001）は，両群の僧帽弁閉鎖不全症の重症度と収縮機能が同等であるにも関わらず男性において有意に大きかった．一方で，体表面積で補正した左房径・左房容積，体表面積で補正した右室径，右室収縮能指標としてのtricuspid annular plane systolic excursion（TAPSE），推定右室収縮期圧は両群で同等であった．
【結論】
同等の僧帽弁閉鎖不全症および心不全の重症度にも拘らず，男性患者の左室容積だけは体表面積で補正しても大きかった．容量負荷に対する左室の反応は，性別によって異なる可能性がある．