山本 哲志¹, 田中 秀和², 粟野 宏之³, 池田 真理子³, 今西 孝充¹, 林 伸英¹, 竹島 泰弘⁴, 戸田 達史⁵, 平田 健一²

Tetsushi YAMAMOTO¹, Hidekazu TANAKA², Hiroyuki AWANO³, Mariko IKEDA³, Takamitsu IMANISHI¹, Nobuhide HAYASHI¹, Yasuhiro TAKESHIMA⁴, Tatsushi TODA⁵, Ken-ichi HIRATA²

¹神戸大学医学部附属病院検査部, ²神戸大学大学院医学研究科循環器内科学分野, ³神戸大学大学院医学研究科小児科学分野, ⁴兵庫医科大学小児科学分野, ⁵神戸大学大学院医学研究科神経内科学分野

¹Department of Clinical Laboratory, Kobe University Hospital, Kobe, Japan., ²Department of Internal Medicine, Division of Cardiovascular Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine, Kobe, Japan, ³Department of Pediatrics, Kobe University Graduate School of Medicine, Kobe, Japan, ⁴Department of Pediatrics, Hyogo College of Medicine, Nishinomiya, Japan, ⁵Department of Neurology, Kobe University Graduate School of Medicine, Kobe, Japan

キーワード :

【はじめに】
福山型筋ジストロフィー（FCMD）はDuchenne型筋ジストロフィー（DMD）についで国内で2番目に多い筋ジストロフィーで，発生率は出生一万人に対して0.7〜1.2人と報告されている．多くのFCMDは歩行が不可であり，DMDに比して全身症状は重篤である．DMD，FCMDともに心筋障害を合併し，予後に大きく寄与しているが，両者の心筋障害の程度を比較検討した報告はない．
【方法】
遺伝子解析にてFCMDと診断され，心エコー図検査にて左室壁運動異常を認めないFCMD連続20例（9.7±6.0歳）を対象とした．また，年齢と左室内径短縮率をマッチさせたDMD25例（9.4±2.9歳）と正常健常者23人（9.5±3.5歳）を比較対象として検討した．全例心エコー図検査は東芝社製Aplio XGを用い，通常の計測項目に加えて，左室乳頭筋レベルの組織ドプラ画像も記録した．東芝社製Echo agentを用い左室乳頭筋レベルのから後壁のpeak radial strainを算出した．3群間比較はANOVAの検定を2群間の比較にはTukey法を用いp＜0.05を有意水準とした．
【結果】
左室径はFCMD群がDMD群と正常群に比して有意に小さく（左室拡張末期径：FCMD群=33.0±4.8mm，DMD群=38.9±4.0mm，正常群=41.4±4.5mm，p＜0.001，左室収縮末期径：FCMD= 21.6．±4.0mm，DMD=25.5±3.0m，正常群=26.4±3.6mm，p＜0.001），左房径は正常群，DMD群，FCMD群の順に有意に小であった（FCMD=18.3±3.8mm，DMD群=23.8±2.8mm，正常群= 29.9±4.6mm，各々p＜0.001）．Peak radial strainは正常群に比してFCMD群DMD群ともに有意に低下していたが（p＜0.001），FCMD群はDMD群に比して有意に高値（p=0.03）であった（FCMD=251.4±81.3％，DMD群=180.6±123.4％，正常群= 334.0±95.4％，p＜0.001）．
【結語】
左室後壁のradial strainを用いてFCMDの潜在性の心筋障害の検出が可能であった．さらに，FCMDの潜在性心筋障害はDMDに比して軽度であり，将来の心病変の予測に応用できる可能性が示唆された．