Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
全身性疾患/その他 

(S516)

ファブリー病成人4症例における臨床像,心エコー図所見の多様性について

Heterogeneity of clinical and echocardiographic findings in four adult cases of Fabry disease

中村 政彦

Masahiko NAKAMURA

山梨県立中央病院循環器内科

Department of Cardiology, Yamanashi Prefectural Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
ファブリー病は,α-galactosidase A活性の遺伝的欠損により全身の臓器組織にスフィンゴ糖脂質が進行性に蓄積し,心臓をはじめとした多臓器障害を示す.心エコー図で,左室肥大を認め,左室肥大は通常進行性であるが,病期が進行し末期に至ると肥大の退縮や心筋の菲薄化が出現する.当初は肥大型心筋症様の病態を呈するが,病期の進行とともに拡張相肥大型心筋症様の病態へと移行する.今回,ファブリー病成人4症例における臨床像,心エコー図所見の多様性について報告する.
【症例】
症例1:50代後半(2000年当時),男性.家族歴:母親に脳梗塞,叔父が夭折.現病歴:1999年から眩暈で近医にて加療,2000年タクシー運転業務中に車内で意識混濁状態にて発見され当院紹介入院.意識混濁,角膜混濁あり.胸部に異常所見なく,腹部に暗赤色の小丘疹あり,右片麻あり.尿蛋白陽性,頭部CTで脳梗塞像あり,胸部X線上心胸比(CTR)60%,心電図上左室肥大(LVH),心房細動,心エコー図上心室中隔厚(IVS)25mm,後壁厚(PW)14 mm,左室拡張終期径(LVEDD)52 mm,収縮終期径(LVESD)43 mm,左室駆出率(LVEF)37.3%で非対称性中隔肥大(ASH),心尖部肥大を認め肥大型心筋症(HCM)が疑われた.腹部皮膚生検により被角血管腫と診断され,白血球のα-galactosidase(α-Gal)A活性3.3nmol/mg/h(正常49.8〜111.6)と低下しファブリー病と診断された.脳梗塞を契機に比較的高齢で診断された典型的(古典型)ファブリー病であった.麻痺が残り,当時,酵素補充療法はなく,ご家族が心,腎疾患精査や家系調査は希望されず,リハビリ病院に転院となった.症例2:50代後半,女性(発端者),家族歴:両親,兄が心,腎疾患で死亡.現病歴:1983年から尿蛋白陽性,2−3分間の意識消失発作あり当時神経内科受診し,原因不明であった.発汗減少,四肢末端の疼痛あり.1993年蛋白尿で当院腎臓内科受診時,心拡大(CTR54%),心電図で左室肥大,心エコーでIVS 30mm,LVPW 22 mm, LVEF 70%とASHを認め,1999年HCMの精査目的で心カテ施行,右室心内膜生検でファブリー病と診断.白血球のα-Gal Aも低下(17.8 nmol/mg/h,正常42.7〜261),2002年に遺伝子変異も確認された.2002年,完全房室ブロックでペースメーカ移植し,2004年6月からアガルシダ−ゼβの補充療法を開始した.LVHは改善傾向だったが徐々に心機能低下し,LVEDD 61mm, ESD 53mm, LVEF 30%と拡張相肥大型心筋症に移行,心不全症状が増悪し2013年12月からβ-blockerを導入した.症例3:60代前半,女性(症例2の姉),家系調査で精査時蛋白尿,心エコー図でIVS 34 mm, LVPW 16 mmとLVH,HCMを認め,α-Gal Aも低下,遺伝子変異も確認された.2006年10月からアガルシダ−ゼβの補充療法を開始,LVHはやや改善傾向で,左心機能は保たれ,尿蛋白は消失した.症例4:20代前半,女性(症例2の長女),家系調査で,α-Gal A低下,遺伝子変異が確認された.臨床症状なく,心エコー図も正常範囲で,蛋白尿などは認められないが,酵素補充療法を検討中である.
【結語】
ファブリー病の臨床像は性別や罹病期間により,また同一家系でも多様性があり,酵素補充療法に対する反応性も異なる可能性がある.心エコー図は非侵襲的に多様な病態,治療への反応性を評価でき有用であった.