英文誌(2004-)
一般口演 循環器
弁膜症
(S515)
大動脈弁狭窄とコレステロールとの関係及びスタチンとアルカリフォスファターゼの検討
Correlation between aortic valve stenosis and cholesterol, and relation between statin and alkaline phosphatase
藤井 裕子
Hiroko FUJII
弘前大学循環呼吸腎臓内科
Cardiology, Hirosaki University
キーワード :
【目的】
大動脈弁の硬化性変化は大動脈弁狭窄の病因に関わらず,時間経過において大動脈弁の開放制限に関与する.我々は,『スタチンは血清コレステロール値およびアルカリフォスファターゼ(ALP)値を介して大動脈弁狭窄症重症度に影響を及ぼす.』と仮説を立てた.
【方法】
2012年6月から2013年5月に当科に入院した中等度から重症のASの42例(男性15例;女性27例)を対象とした.心エコー図検査で,大動脈弁(AV)での最大血流速波形,左室流出路(LVOT)での流速波形,および,LVOT径を計測し,大動脈弁口面積(AVA)を連続式から求め,血清コレステロール値を含む生化学的データと比較検討した.
【結果】
心臓超音波検査において,AVAが1.0 cm2未満と以上に分類すると,大動脈弁最大血流速度(p=0.004)と平均圧格差(p=0.002)に有意差を呈し,AVA1.0 cm2で重症と中等症に分け,生化学的データと比較検討した.スタチン未治療群でAVAとLDL-コレステロールロール値間に負の相関関係を呈した(r2=0.36,p=0.0019).一方,スタチン治療群で両者間には相関関係は認められなかった.CRPは有意差はなかったものの,重症群およびスタチン治療群で低い傾向があった.ALPも有意差はなかったが,中等症群で高く,スタチン治療群で高い傾向にあった.
【結論】
大動脈弁狭窄症中等症と重症例において,スタチン未治療群で,血清LDL-コレステロール値が高値になれば,大動脈弁の開放制限の増悪が示唆された.スタチン治療群では,わずかに炎症が押さえられるものの,ALPは重症群では低下傾向がみられらが,中等症ではむしろ高い傾向がみられた.大動脈弁の石灰化においては,スタチンはその進行の過程でプラスのみならずマイナスの効果の可能性も示唆された.従って,中等症においては,ALPの推移に注意する必要性が示唆された.