Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 循環器
弁膜症 

(S514)

大動脈弁狭窄症の進行に関与する因子の検討

Predictors of Rapid Progression of Aortic Stenosis

諏訪 惠信, 宮坂 陽子, 辻本 悟史, 前羽 宏史, 塩島 一朗

Yoshinobu SUWA, Yoko MIYASAKA, Satoshi TSUJIMOTO, Hirofumi MAEBA, Ichiro SHIOJIMA

関西医科大学第二内科

Depatrment of Medcine II, Kansai Medical University

キーワード :

【背景】
大動脈弁狭窄症において重症度の進行は個人差が大きく,早期重症化の危険因子について様々な検討がなされているが一定した見解は未だ得られていない.
【方法】
対象は2007年7月から2014年7月に当院にて経胸壁心臓超音波検査を施行した連続患者のうち,重症度に関わらず大動脈弁狭窄症の診断基準を満たし,かつ4か月以上間隔をあけて2回以上当院で経胸壁心臓超音波検査を行っている患者を対象とした.当院での初回心臓超音波検査時の患者背景,基礎疾患,心臓超音波検査データを取集した.大動脈弁狭窄症の重症度はAHA/ACCガイドラインの診断基準に基づいた.大動脈弁狭窄症の早期進行群を大動脈最大血流速度の年間増加率>0.3 m/secと定義した.ロジスティク多変量解析を用いて早期進行に関与する危険因子を検討した.
【結果】
大動脈弁狭窄症患者209人のうち,対象基準を満たした59人を本研究の対象患者とした.当院での初回検査時の患者背景として,年齢は72±9歳,男性58%,高血圧症85%,糖尿病14%,維持透析患者19%,大動脈弁狭窄症の重症度は軽症17%,中等症53%,重症30%であった.また心臓超音波検査データのうち,平均大動脈弁弁口面積は0.98±0.34cm2,平均大動脈最大血流速度は3.78±0.92 m/sec,大動脈-左室平均圧較差は34.3±18.1 mmHgであった.初回検査から最終検査までの平均観察期間は2.9±1.7年であり,その間の大動脈最大血流速度の年間増加率は平均0.53±0.59 m/sec,早期進行群は39人(66%)であった(うち軽症18%,中等症56%,重症26%).早期進行群と非早期進行群には年齢や性別に有意な差は認められなかった.年齢,性別,基礎疾患などを調整したロジスティク多変量解析の結果,腎機能障害群(血清クレアチニン>1.2mg/dl)が独立した大動脈弁狭窄症の早期重症化の危険因子であった(オッズ比=5.5,95%信頼区間= 1.1-27.3,P<0.05).
【結語】
大動脈弁狭窄症患者では,腎機能障害例の早期進行リスクは非腎機能障害例に比し約5.5倍高く,より慎重な経過観察が必要であると考えられた.