堀 貴好¹, 中村 学¹, 安田 英明², 橋ノ口 由美子¹, 井上 真喜¹, 北洞 久美子¹, 森田 康弘³, 坪井 英之³, 曽根 孝仁³

Takayoshi HORI¹, Manabu NAKAMURA¹, Hideaki YASUDA², Yumiko HASHINOKUCHI¹, Maki INOUE¹, Kumiko KITAHORA¹, Yasuhiro MORITA³, Hideyuki TSUBOI³, Hidenori SONE³

¹大垣市民病院診療検査科形態診断室, ²大垣市民病院血管専門検査室, ³大垣市民病院循環器内科

¹Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital, ²Vascular Laboratory, Ogaki Municipal Hospital, ³Department of Cardiology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【背景】
近年左房容積は，心不全の指標として注目されている．当院でもカテーテルアブレーション術前後の心機能評価に，2次元心エコー法（以下，UCG）による左房容積測定を始めた．しかしながらUCGによる左房容積測定値は，心電図同期造影CT（以下，心臓CT）のそれと比較し過小評価になると報告されている．またUCGでは，検者間の再現性が問題となる．
【目的】
今回，UCGと心臓CTの左房容積測定値を比較検討した．また，UCGによる左房容積測定値の検者間再現性についても検討した．
【対象】
1）左房容積測定値の比較：平成26年4月1日から8月31日までに当院でカテーテルア
ブレーション術前にUCGと心臓CTを同日に施行した連続41例で，平均年齢64.8歳（中央値：69歳），男女比29：12，内訳は発作性心房細動23例，持続性心房細動14例，その他4例であった．
2）検者間再現性：心疾患の無い健常ボランテイア20名
【使用装置】
超音波診断装置：Prosoundα7・Prosoundα5（日立アロカメディカル社製），Xario（東芝メディカルシステムズ社製）
CT装置：SOMATOM Definition AS+（SIEMENS社製）
CT Workstatation：SYNAPS VINCENT（FUJIFILM Medical社製）
【方法】
1）左房容積測定値の比較
UCG：左房容積測定は，2断面（心尖部四腔像，二腔像）よりModifid Simpson’s Methodにて算出した．心周期位相は，いずれも収縮末期とした．
心臓CT：収縮末期で画像再構成したVolume dataを用いて，Workstationで左房をROI（Region of interest）で囲み抽出した（左心耳，両肺静脈は含まない）．『体積測定』のアプリケーションを用い，先に抽出した左房の容積を算出した．
2）検者間誤差の検討
当院の心臓超音波検査技師3名にて対象の左房容積を測定した．測定方法は上記に準じ，装置はProsoundα7を用いた．
【結果】
1）左房容積測定値の比較
UCGと心臓CTの左房容積測定値は，y=0.53x+13.7，R=0.84の良い相関を示した．しかしながらBland-Altman法にて，UCGは心臓CTに比し過小評価で，左房容積が大きくなるほど測定値誤差は有意に増大した．（P＜0.05）
2）検者間再現性
3検者間で左房容積測定値に有意な差を認めなかった．
【考察】
今回容積測定に用いたModifid Simpson’s Methodは，対象を楕円形と仮定した測定法であり，複雑な構造・形状を有する左房の容積測定には限界があると考えられた．また，検者間再現性の対象は左房容積が正常であり，心臓CTとの比較で誤差が大きくなった大きい例がなかったことが再現性の良かった要因の一つと推察された．
【結語】
2次元心エコー法による左房容積測定は，カテーテルアブレーション術前後の心機能評価に簡便な経過観察法として有用である可能性が示唆された．しかしながら，左房容積が大きい例には注意が必要である．