宗久 佳子¹, 鎌田 ななみ¹, 宗久 雅人¹, 千葉 啓克¹, 中西 徹¹, 伊藤 宏²

Yoshiko MUNEHISA¹, Nanami KAMATA¹, Masato MUNEHISA¹, Yoshikatsu CHIBA¹, Tooru NAKANISHI¹, Hiroshi ITO²

¹由利組合総合病院循環器内科, ²秋田大学医学部附属病院循環器科

¹Cardiology, Yurikumiai General Hospital, ²Cardiology, Akita University Hospital

キーワード :

【目的】
心不全治療において，EF, E/E’，BNPは治療効果を判定する上で，非常に有用な指標である．今回我々は，これらと相関し，治療効果を判定できる非常に簡便な心エコー指標であるAQ intervalについて検討した．
【方法】
2013年から2014年にかけて当院にて心エコー検査を施行した311人，うち正常群（高血圧症を含む）81人，虚血性心疾患群（IHD群）110人，非虚血性心疾患（non IHD群）123人を対象とした．ALOKAα10を用いて，僧帽弁流入血流のドプラ波E/AのA波の終了ポイントから，心電図のQRS波の開始までの時間を計測し，AQ intervalとした．なお，A波がQRSの開始より早く終了する場合を正，QRSより遅く終了する場合を負としている．
【結果】
全症例においてAQ＞0ms, AQ＜0msで分けると，平均EF 45.94％，62.96％（P＜0.001），平均BNP 600.46pg/dl, 196.45pg/dl（P＜0.001），平均E/E’16.70，11.43（P＜0.001）であった．正常群（N=81）では，平均AQ -39.02ms，平均EF 69.98％，平均BNP 66.51pg/dl，平均E/E’10.59に対し，IHD群（N=110）では，平均AQ -29.3ms，平均EF 54.8％，平均BNP 363.6pg/dl，平均E/E’12.46で，AQ＞0ms, AQ＜0msで分けると，平均EF 45.68％，57.05％（P＜0.001），平均BNP 636.74pg/dl, 283.14pg/dl（P＜0.001），平均E/E’15.44，11.49（P＜0.001）であった．また，non IHD群（N=123）　平均AQ -30.6ms，平均EF 59.4％，平均BNP 264.6pg/dl，平均E/E’12.46で，AQ＞0ms, AQ＜0msで分けると，平均EF 42.94％，62.45％（P＜0.001），平均BNP 630.46pg/dl, 198.49pg/dl（P＜0.001），平均E/E’19.14，11.98（P＜0.001）となった．
IHD群もnon IHD群もAQ intervalとEFは弱い負の相関（R=-0.4）, AQ intervalとBNPは弱い正の相関（R=0.3）ではあるが，個人の治療経過におけるAQ intervalの変化を観察すると，IHD群（N=10）では，AQ intervalとEFにおいて平均R=-0.969の強い負の相関，AQ intervalとBNPでは平均R= 0.665，AQ intervalとE/E’では平均R= 0.845の強い正の相関がみられた．non IHD群（N=15）でも同様に，AQ intervalとEFにおいて平均R=-0.851の強い負の相関，AQ intervalとBNPでは平均R= 0.819，AQ intervalとE/E’では平均R= 0.747の強い正の相関がみられた．ただし，心不全増悪時に，重症MRのようにみかけ上EFが上昇する症例や，HOCMでEF上昇により拡張能が低下する症例，重症肺高血圧症でEFでは心不全状態の判定が困難な症例では，EFに相関せず，BNP，E/E’に正の相関を示していた．
また，Swan-Ganzカテーテルが施行された症例について，AQ intervalはPCWPに対しR=0.52（N=14），EDPに対しR=0.59（N=8）の正の相関がみられた．
【結語】
AQ intervalは心不全の治療経過において，簡便に治療効果を観察できる．