土屋 健伸, 清水 一磨, 深澤 昂太, 毛利 裕則, 沈 楽辰, 遠藤 信行

Takenobu TSUCHIYA, Kazuma SHIMIZU, Kota FUKASAWA, Hironori MOURI, Rakushin CHEN, Nobuyuki ENDOH

神奈川大学工学部電気電子情報工学科

Faculty of Engineering, Kanagawa University

キーワード :

【緒言】
超音波診断装置の安全性に関しては十二分な対応が行われてきたが，近年，高出力な装置の開発がなされているため，改めて熱作用に関する研究が注目されている．我々も，ファントム実験と数値シミュレーションの双方から検討を実施してきた［1，2］．本報告では，熱画像法［3］を用いて測定したアクリル擬似骨の周囲温度に対する骨の影響について報告する．
【方法】
1辺90 mmの生体軟部組織ファントムを恒温水槽内に設置し，有効駆動直径65 mm，焦点距離55 mm（水中）の集束形振動子から超音波を照射した．周波数2 MHz，超音波強度I_SPTA=100 W/cm²，Duty比20％，PRFを1 kHzとした．振動子の中心軸上の深度65 mmの位置を直径10mmの円形アクリル擬似骨の中心とした．擬似骨は観測断面を横断するように設置した．超音波を照射後，ファントムを水中から取り出て擬似骨を抜いた後に観測面の温度分布を赤外線カメラを用いて測定した．
【結果】
Fig. 1に熱画像を示す．生体ファントムの減衰による影響で焦点距離が水中より手前側の52 mmにある．骨の部分は空洞になっているために熱分布が測定できていないが，骨前方で大きな温度上昇が見られる．Fig. 2に音源中心軸上の温度分布を示す．最大温度上昇値は骨近傍の58 mmになっており，焦点位置（52mm）より約1℃高くなっている．骨前方位置での最大温度差は2℃以上あり，骨による温度上昇値への影響を確認できた．
【結言】
熱画像法を用いてアクリル擬似骨の周囲温度の上昇を観測した結果について報告した．骨による影響は，ファントムとの境界面での超音波の反射による強度の上昇に依存する要因と，骨内部で発熱が生体組織への熱伝搬に依存する要因が考えれられる．今後，内部の温度を熱電対で測定して，その要因を定量的に把握し，大会当日に報告する予定である．
【参考文献】
［1］清水他，日超医第26回関東甲信越地方会抄録集，（2014）, p.53.
［2］深澤他，日超医第26回関東甲信越地方会抄録集，（2014）, p.53.
［3］S. Yamazaki, IUS, IEEE-UFFC2008，pp.1698 - 1701.