Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
定量診断② 

(S495)

超音波加温による生体組織の体積熱容量の測定法

A method for measurement of volumetric heat capacity of biological tissue by ultrasonic heating

杉山 真璃子, 清水 冠太朗, 渡辺 好章, 秋山 いわき

Mariko SUGIYAMA, Kantaro SHIMIZU, Yoshiaki WATANABE, Iwaki AKIYAMA

同志社大学超音波医科学センター

Medical Ultrasonic Research Center, Doshisha University

キーワード :

【目的】
本研究では生体組織の体積熱容量CVに着目した超音波組織性状診断を検討している.本手法は,超音波によって組織を加温したときの温度上昇からCvを推定する.今回,生体組織の音響インピーダンスに近いひまし油のCvを測定した.
【対象と方法】
体積熱容量Cvの測定は次式で表される生体熱輸送方程式を用いた.
dT/dt=κ∇2 T-∆T/ε+2αI/Cv
ここで,Tは温度,κは熱拡散率,εは血液循環の時定数,αは超音波の減衰定数,Iは超音波強度である.超音波照射開始時t=0で温度分布は一様であると仮定すると,t=0においては右辺第1項と第2項を無視できる.したがって,dT/dtをt=0に外挿した値を用いて,次式から推定できる.
Cv=2αI/{dT/dt}(t=0)
実験では10mm×10mm×10mmのアクリルケースにひまし油700mLを満たして,上部に口径30mm,共振周波数2MHz,焦点距離35mmの集束型凹面振動子を,その焦点位置にT型熱電対を設置した.超音波照射時の温度上昇を熱電対により1ms間隔で測定した.熱電対のViscous heatingによる温度上昇値を補正するために,水中で同様の実験を行い,その温度上昇曲線を減算した.減衰定数αは口径10mm,共振周波数2MHzの平面振動子を用いてひまし油と水でのパルス送波時の反射体(真鍮)からのエコーの振幅の比から求めた.超音波強度Iは音圧
PcからI=(Pc2)/2ρcで計算した.ハイドロフォンを用いて水中焦点音圧Pwを測定し,焦点位置に設置した反射体(真鍮)からのエコーにおける水とひまし油の振幅比Ac/Awを用いて次式で補正した.
Pc=Pw Ac/Aw e(αdf)
ただし,dfは焦点距離である.
【結果と考察】
測定された温度上昇曲線を図に示す.t=0に外挿した値は0.890 K/sであった.また,Cvの計算に必要なパラメータは,それぞれα=0.244 Np/cm,Pw=678 kPa,I=4.14 W/cm2,ρ=968 kg/m3,c=1476 m/sであった.これらの測定値からひまし油のCvは1.83J/cm3/Kと計算され,文献値1.89 J/cm3/Kとの誤差2%で一致した.
【結論】
超音波照射による組織の温度上昇からひまし油のCvを測定した.測定値は文献値と一致した.今後は生体組織模擬ファントムおよび生体組織について測定を行う.
【謝辞】
本研究は文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(平成25年度-29年度)の補助を受けた.