Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
定量診断② 

(S495)

複合的なエコー信号振幅分布特性解析による脂肪肝の評価

Evaluation of the fatty liver by the complex echo signal amplitude distribution properties analysis

土澤 開1, 吉田 憲司2, 伊藤 幹人1, 丸山 紀史3, 蜂屋 弘之4, 山口 匡2

Kai TSUCHIZAWA1, Kenji YOSHIDA2, Mikito ITO1, Hitoshi MARUYAMA3, Hiroyuki HACHIYA4, Tadashi YAMAGUCHI2

1千葉大学大学院工学研究科, 2千葉大学フロンティア医工学センター, 3千葉大学医学研究院, 4東京工業大学理工学研究科

1Graduate School of Engineering, Chiba University, 2Research Center for Frontier Medical, Chiba University, 3Graduate School of Medicine, Chiba University, 4Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology

キーワード :

【目的】
超音波診断装置を用いた脂肪肝の診断の現状は,脂肪の沈着により生じたエコー画像上の特徴を医師の目視により読み取ることで脂肪沈着の有無の判定を行っている.しかし,脂肪沈着度や脂肪分布については正確な情報を得ることができず,また医師により診断内容が変わる可能性があるため,定量的な診断法の確立が望まれている.我々はこれまでに,慢性肝炎の肝臓において,得られたエコー信号振幅分布特性を統計的に解析することで,スペックルノイズに混入する病変組織の情報を検出し,組織性状診断を実現する手法を試みてきた.そこで本研究では,この手法を拡張し,複合的なエコー信号振幅特性解析手法を脂肪を含む肝臓の臨床データに適用することで,脂肪沈着度や分布情報の評価を試みた.
【方法】
正常肝の組織構造は,散乱体となる微小構造が密かつ均質に存在しているため,エコー信号振幅分布特性はレイリー分布に近似可能である.一方,脂肪肝の場合では均質媒質中に散乱体密度の異なる微小な組織が複数混在しているため,レイリー分布から逸脱すると考えられる.この場合エコー信号振幅分布特性は分散の異なる複数のレイリー分布の和で近似可能であると仮定すると,組織の混在率と散乱体密度に関連する分散比パラメータを推定することができる.本研究では,2つおよび3つのレイリー分布を複合した振幅分布モデルを考えた.超音波診断装置(AplioXGTM,東芝メディカルシステムズ)を使用し,異なる送受信周波数(1.9,2.8,4.0,5.0,6.0 MHz)において取得された臨床データに対して,上記の解析手法を適用した.解析方法としては,10 mm×10 mmのROI内において解析を行い,組織の混在率,分散比パラメータを算出した.また,上記のROIを臨床データ内の肝臓と考えられる部分に走査させた.肝生検により取得された組織の病理診断画像を基に脂肪割合を算出し,混在率,分散比パラメータとの相関関係を検討した.
【結果と考察】
2つおよび3つのレイリー分布を複合した振幅分布モデルを臨床データに適用した場合に近似した分布と実験的得られた分布との一致度を評価した1つのレイリー分布のみで近似した場合と比べて精度が向上したことを確認し,本手法の有用性を示した.ただし,2つのレイリー分布,3つのレイリー分布を複合した場合とでは大きな差は見られなかった.また,肝生検結果から算出した脂肪割合と,混在率パラメータとの相関関係を検討した.2つのレイリー分布を複合した場合,混在率パラメータと脂肪割合との相関係数は0.39となり,3つのレイリー分布を複合したモデルの場合,混在率と脂肪割合の相関係数は0.18となった.この結果から,脂肪割合と相関関係は確認できなかった.今後,局所的に解析することで,脂肪割合と分散比パラメータの関係性を検討する必要があると考えられる.