Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
定量診断② 

(S494)

多項式フィティング法を用いた温度計測ノイズの低減を通じた熱物性再構成

Thermal property reconstruction via reduction of temperature measurement noise using polynomial fitting method

炭 親良, 岩井 貴紀

Chikayoshi SUMI, Takanori IWAI

上智大学大学院理工学研究科情報学領域

Info Sci, Sophia University Graduate School of Sci & Tech

キーワード :

【目的・対象】
我々はヒト組織内の温度分布計測に基づく熱物性分布の再構成法を開発している.ヒト組織内の温度分布は,超音波画像診断装置や核磁気共鳴画像診断装置等を使用して計測される.本研究における熱物性とは,熱伝導率や熱容量,灌流効果であり,熱源を共に再構成することもある.これらの実時間の再構成が可能となれば,HIFU(High Intensity Focus Ultrasound)や電磁波加熱凝固治療等の低侵襲的加熱治療の治療計画を立てることが可能となり,治療効果を向上させ,信頼性と安全性をも獲得できる(minimum-invasive treatment).再構成の安定化には,これまで,温度計測分布データに低域通過型フィルタをかける,また,再構成方程式を解く際に正則化を施してきた.本研究では,低域通過型フィルタの計測誤差の低減効果を上回る多項式フィッティング法[1]を用い,再構成への効果をシミュレーションと寒天ファントム実験を通じて確認した結果を報告する.
【方法・結果】
シミュレーションでは,30 mm辺の立方体数値ファントムを対象とした.ファントム内には,立方体の中心から深さ方向x方向に+1.5 mmの位置を中心とする半径3 mmの灌流球領域と,−1.5 mmの位置を中心とする熱伝導率と比熱が周囲に比べて高い半径3 mmの球領域が存在する.熱伝導率を1.0 vs 0.5 W/mK,比熱を8,400 vs 4,200 J/Kkgとし,密度は一様に1,000 kg/m3とした.ファントム内の温度の初期値は,一様に36℃とした.血液の温度Tbを36℃とし,灌流係数を2.0kg/m3s,血液の比熱を3,770 J/Kkgとした.時刻t = 0秒において,ファントム上面の温度を36度から42度にステップ状に上げた.温度データに白色ノイズを加え,SN比が40dBの温度測定データをシミュレートして再構成を行ったところ,これまでの低域通過型フィルタと正則化の組み合わせでは再構成できなかった灌流分布を正則化することなく,再構成できた.その他,熱伝導率や熱容量も良好に再構成できた.
一方,寒天ファントムの温度データは,[2]にて報告した超音波計測(7.5MHz)の結果を用いた.内部には,半径15mmの銅粉を含む円柱が内がってあり,理論的に,導電率と拡散率は周囲に比べて高く,熱容量は低くなる.ファントム(21.4度)は,下方からお湯(46度)で温めた.[1]においては,低域通過型フィルタを用いて,円柱領域を可視化でき,定量的にも上記の如く再構成されたが,本法によれば,より安定的にそれらを再構成できた.
【結論】
多項式フィティング法により,これまでシミュレーションにて再構成できなかった灌流分布を再構成できた(温度データSN比40dB).また,寒天ファントム実験においては,再構成が安定化した.今後は,正則化と合わせて,更なる高精度化に取り組む.
 
[1]炭他,第53回日本生体医工学会(2014).
[2]C. Sumi, PMB, vol. 52,2845(2007).