Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
画像化技術① 

(S488)

グローバルイルミネーションにおける光子数と影の鮮鋭度の検討

Relationship between photon count and sharpness of shadow on global illumination imaging

久我 衣津紀1, WAHRENBERG Magnus2

Itsuki KUGA1, Magnus WAHRENBERG2

1東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部, 2東芝メディカルビジュアライゼーションシステムズ・ヨーロッパ社ビジュアライゼーショングループ

1Ultrasound Systems Development Department, Toshiba Medical Systems Corporation, 2Visualization Group, Toshiba Medical Visualization Systems Europe Ltd.

キーワード :

【はじめに】
近年3D超音波イメージングにおいてグローバルイルミネーションが使われている.この手法はライティングシミュレーションにより組織の自然な見た目と影付け効果を与えリアルなイメージングを可能にする.ライティングシミュレーションには,対象データボリューム内に仮想光子を放出し各光子のエネルギーがボリューム内で吸収や散乱等をしながらどのように伝搬するか計算する手法,フォトンマッピングが広く用いられている.散乱を加味することは柔らかい組織を表現するのに重要である.フォトンマッピングに使用される光子の数は画像品質に影響を与える.より多くの光子を使用するほど,より鋭いエネルギー分布とより正確な放射照度近似を得ることができる.今回は光子数に着目し,光子数が影の鮮鋭度や最終的な画像品質にどのように影響するか報告する.
【方法と対象】
メカニカル4DプローブPVT-675MVで取得した28ミリ四方の胎児の耳のデータセットに対し,5000,10000,100000の異なる光子数によりLuminanceモードによるレンダリングを行った.画像に落ちた半影領域を測定することにより影の鮮鋭度の評価を行った.影が均一な濃色からフェードアウトする幅を半影領域として規定した.
【結果】
影付きは光子の数を増やすことにより著しく鋭くなった.光子数を5000から10000に倍増させると半影は50%に低減した.光子数をさらに増加すると半影の低下率が小さくなった.即ち,光子を10000から100000に増やしても低減率は63%であった.半影領域の測定結果は視覚的な外観とよく一致していた.視覚的にも5000から10000の鮮鋭度の差は容易に認識できた.一方で,詳細な構造物の表現はローカルシェーディングにより解決されるため,光子数に関わらずよく保存されていた.視覚的には5000〜100000の結果を見比べても消えている構造物は確認できなかった.また,計算時間は光子数に比例して増大した.
【結論】
半影領域の測定結果と視覚的な外観から分かるように,光子数を増やすとより正確で鋭い影付け効果を生じる.一方,最終出力画像への影響は影の鮮鋭度に限定され,構造の細部はほとんど影響を受けない.影付けと詳細な構造物の両立においては光子数をそれほど増加させなくても得ることができるため,リアルタイム性が重要な超音波イメージングにおいては処理時間との兼ね合いで設定することが必要である.今後は異なるパラメータによる影響も検討する予定である.