Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
画像化技術① 

(S486)

相補的符号を用いた超音波撮像におけるMotion Artifactの低減

Motion artifact suppression for coded excitation with complementary code

石原 千鶴枝, 池田 貞一郎, 鱒沢 裕

Chizue ISHIHARA, Teiichiro IKEDA, Hiroshi MASUZAWA

株式会社日立製作所中央研究所メディカルシステム研究部

Medical System Research Department, Central Research Laboratory, Hitachi, Ltd.

キーワード :

【背景・目的】
SNRの向上を目的として,符号化送受信を使った様々な超音波撮像法が検討されている.中でもGolay符号に代表される相補的符号は,各符号波形の自己相関後に生じるタイムサイドローブ(TSL)が互いに反転関係となる特徴がある.このため,同一部位に対して複数の符号化した送信を行い,各受信信号に対する自己相関処理と同時刻加算を行えば,TSLを互いに打ち消し,メインローブのみを強めた信号を生成する.しかし,撮像対象が動く場合,複数の受信信号間で音波伝搬時間に差が生じ,それぞれのTSLの発生時刻が変動する.これにより,TSLを完全に打ち消すことができず,偽像(Motion Artifact)が発生する.本研究では,2つの符号から成るGolay符号を例に取り,この偽像を低減する方法を提案し,数値計算および実データで確認する.
【方法】
次の手順に従って偽像を低減する.まず1つ目の符号化送信を行い,受信信号を自己相関処理する.同様に,2つ目の符号化送信および自己相関処理を行う.このサイクルを繰り返し,N個(3以上)の自己相関処理後の信号を生成する.これらの信号のTSLは交互に位相反転して生じるため,互いに加算すると信号中のTSLは打ち消し合う方向へ進む.ここで,基準となる送信時刻から離れている信号の寄与率を下げるため,ガウス型の重みづけ加算を行う.本手法による偽像低減効果を,要素波形を中心周波数3 MHzの1波とした数値計算によって見積もる.次に,ファントム実験によりその効果を確認する.実験はコンベックスプローブ(帯域中心3 MHz)を用い,撮像体の移動は送信事象ごとにプローブをファントムに近づけることで模擬する.
【結果・考察】
Fig.1に,N = 3の時の撮像対象の移動距離に対する偽像量を示す.従来の2つの信号を単純加算する方法(normal)よりも,提案手法の偽像低減効果が高いことが分かる.Fig.2に,送信毎の撮像対象の移動距離が0.03 mmの時のファントム画像を示す.提案手法において,Nが増加するほど撮像体の動きのない画像(Original)に近づき,N = 4程度でOriginalと同等となる.ただし,Nが増大するほど1画像を作るまでの時間を要するため,必ずしもNが大きい方が良いとは限らない.目的と条件に応じた最適加算数を設定することが望ましいと考えられる.