Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
組織弾性 

(S485)

せん断波イメージングにおけるせん断波発生位置の最適距離に関する検討

Investigation of Optimal Distance of Push Pulse Position for Shear Wave Elastography

本庄 泰徳, 金山 侑子, 渡辺 正毅, 掛江 明弘, 川岸 哲也

Yasunori HONJO, Yuko KANAYAMA, Masaki WATANABE, Akihiro KAKEE, Tetsuya KAWAGISHI

東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部

Ultrasound Systems Development Department, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【はじめに】
音響放射力によって発生したせん断波を測定するせん断波イメージングでは,せん断波によって生じた数μmといった微小変位を解析している.そのため,微小な擾乱によって結果が左右されやすい.本報告では,プッシュパルスの走査線位置と観測位置(プッシュパルスに最も近いトラッキングパルスの走査線位置)までの距離(以下,プッシュパルス距離)によってせん断速度推定に与える影響を調査し,最適距離について考察する.
【手法】
試作装置はTUS-500A,探触子はPVT-375BTである.硬さが異なる2つのファントム,エラストQAファントム(Model049)の均一部(伝播速度の真値2.89 m/s)および均一なOSTファントム(伝播速度の真値1.89 m/s)に対して,プッシュパルス距離を1.0 mm〜6.0 mmまで変更させながら,せん断速度を算出して真値と比較した.また,プッシュパルスに最も近いトラッキングパルスにおける変位の最大値を算出した.
【結果】
プッシュパルス距離を1.0〜6.0 mmまで変更させて計測したせん断速度の測定結果および,せん断速度の真値を図1に示す.また,図2は,プッシュパルス距離を1.0〜6.0 mmまで変更させたときのせん断波によって発生した最大変位の結果である.図1が示すように,せん断速度の計測結果と真値を比較すると,プッシュパルスとの距離は,2.6〜3.0 mmに設定することが望ましいことが分かる.
また,プッシュパルス距離を近づけると,測定したせん断速度の誤差が大きく,せん断波によって発生した変位も大きくなっていることが分かる.今回の測定条件を元に,音速1540 m/s,焦点深さを50 mmとしてプッシュパルスのビーム幅の半分の長さ(sinc関数の第一零点)を算出すると2.8 mmとなる.すなわち,近距離で誤算が大きくなる領域とビーム幅の半分の長さが一致するため,誤算の要因は,プッシュパルスのビームの影響と考えられる.
逆にプッシュパルス距離を遠ざけると,特に深さ7 cmにおいて,せん断速度の推定結果の誤差が大きくなる.こちらは,距離が遠ざかることによって変位が小さくなりSNが悪いことが原因であると考えられる.
【まとめ】
以上の結果から,プッシュパルスとの距離は,プッシュパルスのビーム幅の半分の長さ以上に設定した上で,可能な限り近づけることで,最適な位置を決定することが出来ると考えられる.