Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
マイクロバブル② 

(S479)

超音波による細胞治療のための微小気泡凝集体の形成法と蛍光観測による制御性の評価

Formation of microbubbles-surrounded cells as carrier for ultrasound cellular therapy and evaluation of controllability with fluorescence imaging

桝田 晃司1, 出町 文1, 村山 優太1, 保坂 直斗1, 望月 剛1, 絵野沢 伸2, 千葉 敏雄2, 小田 雄介3, 鈴木 亮3, 丸山 一雄3

Kohl MASUDA1, Fumi DEMACHI1, Yuta MURAYAMA1, Naoto HOSAKA1, Takashi MOCHIZUKI1, Shin ENOSAWA2, Toshio CHIBA2, Yusuke ODA3, Ryo SUZUKI3, Kazoo MARUYAMA3

1東京農工大学大学院生物システム応用科学府, 2国立成育医療研究センター臨床研究センター, 3帝京大学薬学部

1Graduate School of BASE, Tokyo Univ of A&T, 2Clinical Research Center, National Center for Child Health and Development, 3School of Pharmaceutical Sciences, Teikyo University

キーワード :

【背景】
近年,治療のために特別に調製した細胞を患者に注入する造血幹細胞移植や免疫細胞療法などの細胞移植治療が行われている.特定の部位を標的とする場合はカテーテルを用いる手段もあるが,通常は血流に任せる以外に送達手段が無く,副作用の心配もある.そのため,我々がこれまでに行ってきた音響放射力を利用した微小気泡およびその凝集体の動態制御のための技術を応用することにより,生体内で細胞を送達できる可能性が有る.
【目的】
本研究は,細胞の周囲に微小気泡を付着させた凝集体を形成することにより,超音波の音響放射力を利用して細胞を血流中で運搬するための技術を開発することを目的とする.本手法の発展により,同治療における投与効率の欠点を克服し,薬物との連携を様々に設定できる新しい治療法の可能性が拓ける.
【方法】
本研究では,マウス由来のColon-26細胞と,それに特異的に付着するトランスフェリンを表面に付着させた微小気泡(バブルリポソーム)を用いた.微小気泡の細胞への接着を促進するため,懸濁液中に均一に超音波を照射するための円筒形チャンバを製作した.懸濁液は,生理食塩水中にて微小気泡の濃度を0.33lipid mg/mL,細胞の濃度を0.77×105個/mLとして作成した.チャンバに封入した懸濁液に対し,1MHzの連続波超音波を照射した後,懸濁液を取り出して微小気泡と細胞の分布を蛍光観測した.
【結果】
微小気泡と細胞をそれぞれ別々の波長で励起発光するように染色し,細胞表面に接着した微小気泡の量を計測したところ,チャンバ内で音圧100kPa-ppの正弦波,照射時間を30秒とした場合に,細胞の接着量が最も高くなることが分かった.またこの条件で作成された,微小気泡付き細胞を水中に浮遊させ,駆動用超音波として中心周波数5MHzで音圧300kPa-ppの正弦波の平面波を照射したところ,細胞の分布に変化をもたらすことに成功した.音波照射前後の顕微鏡写真を図に示す.一方,微小気泡を接着させていない細胞に関しては,同様の実験での音波照射下でも細胞の位置は変化しなかった.
【結語】
本実験より,微小気泡を細胞に接着させることにより,音響放射力が細胞の動態に影響することが明らかとなった.