Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
マイクロバブル② 

(S478)

Triggered HIFUを用いたローズベンガル水溶液中のキャビテーション気泡の高速度撮影

High-speed observation of cavitation bubbles in RB solution using triggered HIFU sequence

安田 惇1, 吉澤 晋1, 梅村 晋一郎2

Jun YASUDA1, Shin YOSHIZAWA1, Shin-ichiro UMEMURA2

1東北大学工学研究科通信専攻, 2東北大学医工学研究科

1Department of Communication Engineering, Tohoku Univ., 2Department of Medical-bio Engineering, Tohoku Univ.

キーワード :

【背景・目的】
音響化学療法(Sonodynamic treatment: SDT)は患部に集積した音響化学物質が超音波キャビテーション気泡に励起されることで生成された活性酸素によってがん細胞を死滅させる方法である.音響化学物質としてローズベンガル(Rose Bengal: RB)は活性酸素の生成を促進したり気泡生成の閾値を下げたりすることが先行研究で知られている[1]が,音響化学活性物質存在下のキャビテーション気泡の挙動と活性酸素の生成量の関係に関する研究は少ない.
Triggered HIFUは,最初にTrigger pulseという高強度超音波をμsオーダーの短い間に照射しキャビテーション気泡クラウドを発生させ,その後Sustaining wavesと呼ばれる低強度超音波をmsオーダーの長い間照射し,生成された気泡をより長時間体積振動させるシークエンスであり,この体積振動による活性酸素の効率的な生成を狙っている.本研究では,Triggered HIFUを用い,RBを含む溶液中に生成されたキャビテーション気泡の挙動を高速度撮影により観察し,RBの存在がどのように活性酸素生成の促進メカニズムに関わっているのか考察した.
【方法】
脱気水で満たした水槽内に集束型トランスデューサと水溶液が封入できるチャンバーを設置しチャンバー内でキャビテーション気泡を生成させた.チャンバー内には500 g/Lのヨウ化カリウムと,0 mg/L, 1mg/L, 5mg/L, 10mg/LのRBを溶解させた溶液を封入した.照射シークエンスは,Trigger pulseが100μs,40 kW/cm2,Sustaining wavesが1 ms,500 kW/cm2であり,PRF20 Hz,15分間照射された.高速度カメラはTrigger pulse間に生成されたキャビテーション気泡クラウドの様子とSustaining waves照射中の体積振動されている気泡の様子を撮影し気泡の挙動を観察した.
【結果・考察】
RBの0 mg/Lとその他の濃度,つまりRBあり,なしの場合ではRBありの場合の方が生成した気泡クラウドの量は多かった.しかし,1 mg/L, 5 mg/L, 10 mg/Lの濃度間では気泡クラウド領域とRBの濃度の相関は見られなかった.また,気泡の寿命に関しては,Sustaining waves照射中の画像から,RBありの場合の方がより多くの気泡が残留し,体積振動していることがわかった.このことからRBには,気泡クラウド領域には影響しないがより気泡の存在を安定化させ,RBがない場合に比べより長時間体積振動させる効果があることがわかり,これが活性酸素の生成を効率化させている一つの要因と考えられるが,他の要因について今後も検討が必要である.
 
[1]K.Kawabata,S.Umemura,Ultrasonics.35,469(1997)