Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
治療・生体作用 

(S474)

呼吸性体動の9割近くを補償する非侵襲超音波診断・治療統合システムの構築

Non-Invasive Ultrasound Theragnostic System which compensate nearly 90 percent of body motion

小泉 憲裕1, 李 東俊2, 藤井 達也2, 月原 弘之3, 福田 浩之4, 葭仲 潔5, 杉田 直彦2, 沼田 和司4, 松本 洋一郎2, 光石 衛2

Norihiro KOIZUMI1, Dongjun LEE2, Tatsuya FUJII2, Hiroyuki TSUKIHARA3, Hiroyuki FUKUDA4, Kiyoshi YOSHINAKA5, Naohiko SUGITA2, Kazushi NUMATA4, Yoichiro MATSUMOTO2, Mamoru MITSUISHI2

1東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻, 2東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻, 3東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻, 4横浜市立大消化器内科, 5独立行政法人産業技術総合研究所ヒューマンライフテクノロジー研究部門

1Department of Bioengineering, School of Engineering, the University of Tokyo, 2Department of Mechanical Engineering, School of Engineering, the University of Tokyo, 3Department of Precision Engineering, School of Engineering, the University of Tokyo, 4Department of Gastroenterology, Yokohama City University, 5Research Division of Human Life Technology, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology

キーワード :

本研究では,2方向からの超音波画像をもとに画像追跡技術を利用して患部の運動補償を行なう非侵襲超音波診断・治療統合システムを提案する.非侵襲超音波診断・治療統合システムとは,肝臓や腎臓等,呼吸や心拍動等によって能動的に運動する患部を抽出・追従・モニタリングしながら,超音波を集束させてピンポイントに照射することでがん組織や結石の破砕を患者の皮膚表面を切開することなく非侵襲かつ低負担で行なおうとするものである.本システムで提供する体動補償技術は体動の90%近くを補償することができ,正常な組織に対する損傷を最小限に抑制するための有望な将来医療基盤技術になるものと期待されている.
本研究の背景には2点ある.1点めは,強力集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound:HIFU)による非侵襲超音波治療技術の顕著な発達である.これは,球面型の超音波振動子を用いて超音波を集束させることにより,周りの体組織に損傷を与えることなく,体内の狭い領域にエネルギーを集中させるというものであり,正常な組織を損傷させることなくピンポイントに患部のみを治療することができる.2点めは,ITおよびロボット(IRT)技術を利用して人間の熟練した技能を再構築する,言わば“技能の技術化・デジタル化”がテクノロジーの発達とともに可能になりつつある.すでに製造業分野では,人間の能力のみでは不可能な高精度の作業がロボット技術の利用により実現されている.
高度な技能を要求される超音波医療分野においても医療ロボットの開発により,熟練した医療専門家のように人体に対して安全・安心に(接触あるいは非接触)動作するとともに,人間の能力を超える,高精度な診断・治療を実現することが期待されている.
その際,必要ならば医療専門家の医療技能に啓発された全く新しいアプローチから機能を追加・実装することによって,医療の質の向上(高速・高精度化)を図る.これにあたっては,これまで私が中心となって独自に開発・蓄積してきた機構・制御・画像処理に関するコア技術を基盤として,機能を実装することによりシステムを構築した.
構築したシステムで,実際のヒトの腎臓を対象に患部抽出・追従・モニタリング実験を行なったところ,体動の90パーセント近くを補償することができ,目標の2.5mm以内(平均追従精度)での患部追従を実現した.