Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
治療・生体作用 

(S471)

経頭蓋超音波透過率の平準化−−安全で有効な超音波血栓溶解促進療法を目指して

Leveling of Ultrasound Transmission through Cranium for a Safe and Efficient Ultrasonothrombolysis

王 作軍1, 齋藤 理1, 小松 鉄平2, 三村 秀毅2, 井口 保之2, 小川 武希3, 横山 昌幸1

Zuojun WANG1, Osamu SAITO1, Teppei KOMATSU2, Hidetaka MITSUMURA2, Yasuyuki IGUCHI2, Takeki OGAWA3, Masayuki YOKOYAMA1

1東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター・医用エンジニアリング(ME)研究部, 2東京慈恵会医科大学神経内科, 3東京慈恵会医科大学救急部

1Medical Engineering Division, Medical Science Research Center, Jikei University School of Medicine, 2Department of Neurology, Jikei University School of Medicine, 3Division of Emergency, Jikei University School of Medicine

キーワード :

【目的】
経頭蓋超音波併用で急性脳梗塞の血栓溶解を加速することが期待される.ただし,頭蓋骨および頭皮の超音波透過への影響は未だよく解明されていない.本研究はヒト側頭骨および骨ファントムを用いて,両者の超音波透過挙動を解析し,さらに周波数変調による超音波透過率の平準化作用を目指した.
【方法】
音響強度測定装置(AIMS)の脱気水槽の中に,超音波トランスデューサとハイドロホンを同軸上に一定の距離を置いて固定し,その間の予定した位置に,ヒト側頭骨又は各厚さの骨ファントム板を用い,骨の部位,骨ファントムの厚さおよびそれらのトランスデューサとの距離(頭皮厚さ相当)の400-600kHz各周波数および500±100kHz変調波超音波の透過率を測定した.
【結果と考察】
頭蓋骨が厚いほど,又は周波数が高いほど超音波の透過率は減少すると一般に考えられているが,実験の結果,骨ファントム板の厚さに対して透過率が周期的に大きく変動することが,すべての周波数について観察された.例として,500kHz超音波に対して,約1/2波長に近い厚い2.8mmの骨ファントム板の透過率が約1/4波長に近い薄い1.6mmより約4.1倍高かった.一方,皮膚の厚さに相当するトランスデューサと骨ファントム板の距離を変えた場合も,透過率が周期的に大きく変動した.500kHzの場合,水中波長の1/2に近い1.2mmの距離での透過率が1/4波長に近い0.5mmの距離より約7.0倍高かった.ヒト側頭骨を用いての測定もこれと同様に,各周波数について約1/2波長ごとに透過率が周期的に大きく(最大約4倍)変動することを確認した.以上のすべての変動は,変調波によって顕著に減少した.
【結論】
400-600kHzの各単一周波数超音波透過率に対して,頭皮の厚さ,および骨ファントム板の厚さが周期的に強く影響する.これに対して,多い周波数を含んだ変調波駆動は各条件の側頭骨および骨ファントム板の透過率を平準化できる.変調波超音波を用いることでより安全かつ有効な経頭蓋超音波血栓溶解治療法を構築することが期待できる.