Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
治療・生体作用 

(S470)

超音波エネルギーが細菌のバイオフィルム破壊に及ぼす影響

Destructive influence on bacterial biofilm by ultrasonic irradiation

鯉渕 晴美1, 藤井 康友2, 平井 義一3, 山田 俊幸1, 小谷 和彦1, 紺野 啓1, 宮本 恭子1, 谷口 信行1

Harumi KOIBUCHI1, Yasutomo FUJII2, Yoshikazu HIRAI3, Toshiyuki YAMADA1, Kazuhiko KOTANI1, Kei KONNO1, Kyoko MIYAMOTO1, Nobuyuki TANIGUCHI1

1自治医科大学臨床検査医学, 2京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 3自治医科大学感染・免疫学講座細菌学部門

1Department of Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University, 2Department of Human Health Science, Kyoto University Graduate School of Medicine, 3Division of Bacteriology, Department of Infection and Immunity, Jichi Medical University

キーワード :

【目的】
細菌のバイオフィルムは細菌外の多糖類や蛋白などから構成されている.細菌がバイオフィムルを形成し菌塊を覆うことによって,細菌が感染制御機構から逃れ,静かに増殖できる状態となる.また,バイオフィルムによって抗菌薬の浸透性が低下するため,バイオフィルム感染症の多くが抗菌薬治療に対して難治となる.
一方,超音波エネルギーはその照射条件によっては有用な生体反応を惹起する働きを有することが知られている.
今回の目的は,超音波エネルギーが細菌のバイオフィルムの破壊に及ぼす影響について検討することである.
【方法】
6穴wellプレートのうち2つのwellにTryptic Soy Broth(以下,TSB)を2mlずつ入れ,臨床分離株である表皮ブドウ球菌菌液を20μlずつ添加した.プレートを37度36時間培養し,TSBを廃棄したあとwellを生理食塩水で2回洗浄した.wellの底面に残ったものをバイオフィルムとした.wellに生理食塩水を2mlいれ,プレートを超音波照射装置(図参照)にセットした.2つのwellのうち,1つのwellの直下に超音波探触子をおいた.このwellを超音波照射群とした.もうひとつのwellは超音波非照射群とした.
超音波照射条件は,連続波,周波数は1.0MHz,電圧は100mVppとし,照射時間は24時間とした.
また,別の6穴wellのうち2つのwellで上記と同様に作成したバイオフィルムについて,1つのwellに対して,超音波骨折治療器セーフス(帝人ファーマ株式会社)により,20分間超音波照射を行った.このwellをセーフス照射群とした.おなじプレートの別のwellをセーフス非照射群とした.
照射後,生理食塩水を破棄し,wellを静かに生理食塩水で2回洗浄した.0.1%クリスタルバイオレットで染色したあと,99.5%エタノールでクリスタルバイオレットを抽出し,595nmで吸光度を測定し,バイオフィルム量を定量した.
【結論】
超音波照射群の吸光度の平均は0.962,超音波非照射群の吸光度の平均0.227であり,超音波照射群は非照射群と比較して,有意に吸光度が低かった(p<0.05).また,セーフス照射群と非照射群では吸光度の平均値に有意差を認めなかった(p<0.05).
【考察】
超音波照射群では非照射群と比較して吸光度が低く,超音波照射によってバイオフィルムが破壊されたことを示唆している.セーフスでは差が見られなかった.今後は実際のdevice(中心静脈カテーテルなど)上のバイオフィルムに対する超音波エネルギーの効果を調査したいと考えている.