Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
血流・変位ベクトル計測 

(S470)

複数の偏向平面波送波時の変位ベクトル計測の高精度化

Increase in measurement accuracy of displacement vector on plural plane wave transmissions

炭 親良

Chikayoshi SUMI

上智大学理工学部情報理工学科

Dept of Info & Commun Sci, Sophia University

キーワード :

【目的・対象】
我々は,組織内変位や血流計測法の開発をしている.一つに,変位をベクトルとして計測することを行っており,交差ビームまたは交差平面波を用いた横方向変調法が有用であることを報告している.スペクトル周波数分割法の有用性も報告している.昨年度の本研究会では,周波数領域においてスペクトルの零詰めを通じてステアリングビームの角度を大きく取り,高い横方向周波数を実現して高精度な変位ベクトル計測を実現した(超音波周波数7.5MHzに対して,過去においては横方向に約半分の周波数に設定していた[1]に対し,7.5MHzを設定).また,2次元変位ベクトルの計測を行う場合は,2方向の交差ビームを実現すれば良いが,多くのビームを生成してover-determinedシステムを実現し,さらに高精度化した.最小二乗法を用いる,左右対称のビームの組み合わせにて計測された変位ベクトルの平均を取る,コヒーレント加算したものから変位ベクトルを計測した.平面波送波時においても,これまで,横方向変調周波数は7.5/2MHzに設定していたが,本稿では同様に7.5MHzまでの高周波に設定し,同様に高精度な計測を行った.
【方法・結果】
半径5mmの円柱領域(深さ19mm)の寒天濃度が周囲に比べて高い寒天ファントム(40×96×40mm3)を対象とし,横方向に圧迫を加えた.超音波周波数はf=7.5MHzである.変位ベクトル計測には,多次元自己相関法を用いた.計測精度は,横方向歪のばらつきを以ってして評価した.横方向周波数が1/2fとfのとき,円柱領域内のばらつきは,各々,0.28%と0.22%であった.1/8fの間隔にて,1/8fからfの周波数の計16ビームを用いたところ,最小二乗法により,0.16%,1/2fからfの周波数の計10ビームを用いて計測結果を平均したところ,0.16%,同10ビームを用いてコヒーレント加算した場合に0.20%であった.これに対し,大きなステアリング角度の差を持つ独立なビームを使用すると,少ないビーム数で,各々,ほぼ同程度の精度を実現できた[最小二乗法で(1,1/2,3/4,1/4)×fの8ビーム,平均で(1,1/2,3/4)×fの6ビーム,コヒーレント加算で(1,1/2)×fの4ビームであった.
平面波送波の場合は,横方向周波数がf/2とfのときで,0.50%と0.42%であった.同様にして,over-determinedシステムを実現し,最小二乗法により0.27%(f, 3/4fとf/2の6平面波),平均により0.27%(同6平面波),0.31%(fと3/4fの4平面波)を得た.平面波をさらに増やすと,各々の結果は,0.19%(14平面波),0.20%(12平面波),0.21%(14平面波)に向上し,フォーカス時にてf/2であるときの0.22%よりも良い結果となった.
【結論】
平面波送波において,高精度な計測が可能であった.フォーカシング時に比べて,格段に高速にスキャンすることができることも確認された.フォーカシング時には,多方向開口面合成法が有用であるが,平面波送波の時は,複数の偏向平面波を同時に送波しても良い.現在,Ziv-Zakai Lower Boundを用いた重み付け最小二乗法や,スペクトル位相勾配法の周波数空間における重み付けにウィーナーフィルタを用いており,更なる高精度化に取り組んでいる.以前に報告している通り,平面波送波時にコヒーレント加算による広帯域化イメージングは有効であり,その際の超解像も有用である.

[1]C. Sumi, IEEE Trans on UFFC, vol. 55,2607,2008.