Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 工学基礎
血流・変位ベクトル計測 

(S468)

血流観測のためのEcho-Dynamography技術におけるミクロ渦の可視化

Visualization of the Vorticity on Echo-Dynamography for Observation of Blood Flow

大槻 茂雄

Shigeo OHTSUKI

医用超音波技術研究所研究

Resurch Laboratory, Institute of Medical Ultrasound Technology

キーワード :

【目的】
Echo-Dynamography技術では,超音波カラードプラ画像のドプラ速度分布からマクロ渦成分と基本流成分を導出することにより,観測面内の流速ベクトル成分分布が求められる.流速ベクトル成分分布から,ベクトル解析により,回転(rotation)の観測面に垂直方向の成分が求められる.この成分をスカラー量としてミクロ渦と呼ぶことにしている.血流観測におけるミクロ渦は血液の性質と密接な関係を予測される.このミクロ渦をカラードプラ画像上に表示することにより,血流を直感的に把握しやすくしたので報告する.
【対象】
流れのランキン渦モデルと実際の超音波ドプラ画像.
【ミクロ渦の物理的解釈】
Echo-Dynamographyのミクロ渦は,三次元流の流体力学での渦度(Vorticity)の観測面内の流速ベクトルに関する成分であり,観測点のスピンを表す.この回転を観測点流速ベクトルをもとに二つに分けると,①観測ベクトル前後等距離にあるベクトル差の観測点流速ベクトル直交成分による回転と,②観測ベクトル左右等距離にあるベクトル差の観測点流速ベクトル方向成分による回転となる.この内,①は観測点における流線の曲りに関係する.
【ミクロ渦の可視化方法】
ミクロ渦を観測面に表示するためのイメージとして,遊園地における回転円板上に配置されたコーヒーカップ群のそれぞれが回転する遊具を考える.具体的な可視化方法としては,観測面内に複数の観測点を設定し,観測点ごとに円を表示する.円内はVorticityの大きさに対応した色で塗りつぶす.さらに観測点の移動状況を示している流速ベクトルも表示する.
【ミクロ渦の可視化例】
理想的渦モデルであるランキン渦に表示法を適用し,強制渦と自然渦について検討し,流れについて理解を深めることができた.また,左室で生じる渦に適用し,理解しやすい結果が得られた.
【結論】
ミクロ渦は血液の流動性に深く関係する.隣り合うミクロ渦の渦度に差があるときはこの差が小さくなるように流れが変動するが,血液では大きさの異なる粒子成分が多いため流れは流路の形状と大きさに依存すると考えられる.実測データを収集し,ミクロ渦を観測することにより,血液の流動性の評価法を開発できるであろう.