Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
血管 臨床の現場から見た血管エコーガイドラインの役割と課題 腎動脈領域

(S463)

当院の腎動脈超音波検査の現状

US report of renal artery our hospital

手嶋 敏裕

Toshihiro TESHIMA

済生会福岡総合病院検査部

Clinical Laboratory Department, Saiseikai Fukuoka General Hospital

キーワード :

はじめに腎動脈超音波検査(以下RAUSと略)は,2005年のACC/AHAガイドラインにて腎動脈狭窄の診断法としてClassⅠに参入し注目されているが,超音波検査手技においては現在日本超音波医学会にてガイドライン案が作成されているところである.当院でも医師の指導後にRAUS件数が増加してきており,現在の当院の現状を報告させて頂くとともにガイドライン作成への一助となれば幸いである.
当院のRAUS件数は2012年に99件,2013年に204件,2014年12月20日までに223件と件数が増加し,1年間に200件を超えるようになってきた.
今回我々は,2014年1月1日から12月20日までの約1年間のRAUSについて報告する.2014年度1年間で施行したRAUSの総数は223件で,男性155名(69.5%),女性68名(30.5%),年齢は30歳から96歳(平均64.3歳),心不全の診断名がついたものは46例(20.6%)であった.全223例のうち,腎動脈PSVが180cm/sを超えるものを腎動脈狭窄(以下RASと略)疑いとし,PSVが高値であり左右差を認めるが基準に満たないものをRAS鑑別要とした.結果としてRAS疑いは21例(9.4%),RAS鑑別要は11例(4.9%),RAS無し:188例(84.3%),検査施行不可は3例(1.4%)であった.
RAS疑いの中で実際にCTやMRI,angioのいずれかでRASが確認されたのは21例中12例(57%)(そのうち2例は後日CT施行予定)であり,12例中11例で実際にRASが確認された(正診率:92%).
考察として,精査にて狭窄を認めなかった症例のCTを確認したところ石灰化にて内腔の観察は困難であるように思えた.今回の検討の中で,CTにてRASの指摘が無かったもののMRIにてRASを指摘された症例を2例認めた(うち1例は造影なし).このことはRAUSの陽性的中率が非常に高いことを示唆しており,RAUSでRAS疑いとなった場合は,CT,MRIおよびangioを組み合わせて確定診断を行っていくべきである.
このたびの日本超音波医学会により提唱されたRAUSのガイドラインにおいて,描出方法は仰臥位と伏臥位で施行するべきとされている.当院は仰臥位と側臥位で施行しており,報告したように高齢者や心不全の方も多く伏臥位を取ることは困難な場合があり,伏臥位は実用的ではないように思われた.また,計測時のPSVの計測ポイントについては,early systolic peakの取扱いについてもより分かりやすく,例えばwater hummer現象などの注釈も添えて記載されるべきであると考えられる.