Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

ワークショップポスター
血管 臨床の現場から見た血管エコーガイドラインの役割と課題 頸動脈エコー領域

(S462)

青森県における頸部血管超音波ガイドラインに関するアンケート調査

Questionnaire survey about a guideline of carotid ultrasound examination in Aomori

齊藤 元太

Genta SAITO

青森県立中央病院リハビリテーション科

Department of Rehabilitation Medicine, Aomori Prefectural Central Hospital

キーワード :

【目的】
頸動脈エコーのガイドラインは複数存在しているが,その問題点を明らかにするため現状調査を行った.
【対象と方法】
青森県内62病院を対象に平成26年12月8日から12月19日の期間でアンケート調査を行なった.調査項目は,検査の依頼科,ガイドラインの現状,画像表示方法,測定項目として血管径,IMT,血流,プラーク,狭窄,椎骨動脈などについて質問した.
【結果】
アンケートは62病院中30病院より回収された(回収率48.4%).そのうち頸動脈エコー検査を行なっていない6病院を除いた24病院の回答を検討した.検査の依頼元は内分泌内科が29.6%と最も多く,神経内科+脳神経外科と循環器内科+心臓血管外科が18.5%ずつと後に続いた.ガイドラインは16施設(66.7%)で参考にしており,多くは日本脳神経超音波学会(JAN)のガイドラインであった.またほとんどの施設でガイドラインは有用で必要なものと答えており,施設間や検者間の差を縮小できるという意見が多かった.ガイドラインに望むことで最も多かったのは統一された基準や方法で,次いで簡潔な記述であった.B modeでの画像表示は長軸で87.5%,短軸で95.8%,血流方向は75%の施設でJANのガイドラインに従っていた.血管径は62.5%の施設で外膜間径を,25%の施設で内膜間径を計測しており,50%の施設で拡張期に,20.8%の施設では収縮期に計測していた.IMTは58.3%の施設で遠位壁・近位壁両方を計測していた.計測方法は45.8%の施設がmax IMTとmean IMT両方を計測しており,mean IMTは9施設でmax IMTと前後2か所の測定,1施設で装置による自動計測が行われていた.プラークは66.7%の施設でJANのガイドラインに従って厚さのみで定義されており,33.3%の施設では変曲点があるものをプラークと定義していた.IMTの正常値は83.7%の施設で1.0 mmとし,75%の施設で1.1 mm以上をプラークとしていた.プラーク性状は3施設で早期動脈硬化研究会の記号による分類が用いられていた.潰瘍性病変は50%の施設では2 mm以上のものとしていたが,20.8%の施設では特に決めていなかった.プラークスコアは3施設のみで測定されており,1施設は頸動脈を4分割して計測する方法,1施設は総頸動脈・頸動脈洞・内頚動脈で計測する方法であった.またプラークナンバーを記載している施設はなかった.NASCET 70%以上の高度狭窄の診断は,66.7%の施設でPSV 200 cm/s以上を採用していたが,ECST法では70%以上や,80%以上,85%以上を高度狭窄とする施設に分かれた.ED比は41.7%の施設では測定していなかった.椎骨動脈は50%の施設でJANのフローチャートを用いて診断されていたが,37.5%の施設では測定されていなかった.
【考察】
ガイドラインは多くの施設で参考にされており,医療の標準化や医療連携の点で有用性が高いと考えられていた.表示方法やIMTの正常値,プラークの厚さ,プラーク性状の表現方法は施設間であまり差はなかった.しかし血管径の測定方法やプラークの定義には施設間に差があり,多くの施設が希望するように統一されたガイドラインが必要であろう.検査の依頼元は神経内科+脳神経外科よりも内分泌内科が多く,循環器内科+心臓血管外科が同数であった.ED比や椎骨動脈を測定していない施設も多く見られ,脳卒中の検査というより動脈硬化の程度を知るための検査として普及してきているのかもしれない.一方,動脈硬化のマーカーとしてのmean IMTやプラークスコア,プラークナンバーやは測定していない施設も多く見られ,検査の意義や検査方法について検討が必要であると同時に,診療科の特性に合ったガイドラインが必要なのではないだろうか.